第二章 調査開始

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 そんな虎之助が天を仰いでいると、ガタンと椅子を引く音がして、さりげなく横目でみるとゴンスケの相手が立ち上がったところだった。  女は小さなバッグをプラプラと振りながら虎之助の後ろを通り過ぎた。  レジで会計をしてから、案外乱暴にドアを押し開く。ギシィ!というドアの音が彼女の人柄を物語っているようだった。  すかさず虎之助も立ち上がろうとしたその時、同じようにせかせかと後ろを通る人とぶつかりそうになった。 「あっ、すいません!」  虎之助が声をかけたのだがその人は無言のままレジへと急いでいた。  見ると、虎之助よりも少し年上と思しき男だった。急いでいるのかあせっているのか、背中のリュックがまるで走り出しそうなくらい揺れていた。  その男に気を取られて一瞬動きが止まってしまったが、おっといけない!と虎之助も慌てて伝票を掴んでレジへと急いだ。  やばい、女を見失っちゃう、と1000円札と100円玉を伝票と一緒にカウンターにのせてから、お釣りはいいですという声と共に勢いよくドアを押し開けた。  幸い女はまだ20メートルくらい先を歩いていたので難なく追いつくことができた。このまま進めば日本橋のデパートに着く。さっきデパ地下で鰻を買っていくと電話で喋っていた。  デパ地下は人が多いから見失わないように気をつけなきゃ、と気を引き締めるつもりで背筋を伸ばす。  デパートの下りエスカレーターで地下一階の食品売り場へ行くと、昼の時間帯だからか、中高年のご婦人方で混雑していた。だが尾行にもすっかり慣れている虎之助は、順調に後をつけ、買い物を終えて地下鉄の改札へと向かう女の後もしっかりと追い続けた。
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