第三章 もう一人の調査員

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 地下鉄を乗り継いで降りたのは、月島だった。  へえ、意外と庶民的な町に住んでいるんだな、と思ったのもつかの間、女は高くそびえ立つタワーマンションに向かって歩いていく。 ・・すげー!タワマンに住んでるのか!・・  体をのけ反らせて最上階を見上げる虎之助の腰は、まるでラジオ体操の動きの一つ。目いっぱい反らせてビルを仰ぐ。だが体を戻した虎之助の目に入ってきたのは、そのタワマンの隣にちんまりと建つ5階建てのマンションのエントランスの階段を上る女の後姿だった。 ・・なんだ、そっちか・・なぜだかホッとした気分になった虎之助である。  だがその後はホッとしている場合ではなかった。  オートロックの入り口の向こうには入ることはできない。いままでも経験してきてはいるが、なんとなくがっくりと肩を落とした。  だけど女の住まい、そしてゴンスケこと谷村海斗との関係がほぼわかったことは、今日の大きな収穫であった。
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