第三章 もう一人の調査員

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 周りに人がいないことを確かめてから写真をと、前後左右に顔を向けて見る。すると、自動販売機の横に男が立っているのが見えた。  その人以外には人がいないので、せっかくのチャンスなのにと構えようとしていたスマホをさりげなく下ろした。そしてその男にもう一度視線を送った時にあれ?と首を傾げた。  あの男・・見覚えがある。えっと、どこでだったか・・ 「あっ!あの時の!」  思わず声を上げて思い出した。さっき、レストランで自分をぬかして会計して店を出た、あの男だ。  一瞬横顔を見ただけなのになぜ覚えていたのか。それは、特徴的なリュックのおかげだ。    そのリュックを今は前に抱えるようにして掛けている。だから気が付くことができたのだ。       店を出る男のリュックはゆさゆさと揺れていた。そのリュックには何かがたくさんぶら下がっていた。たぶんプラスチック製のもの。互いがぶつかる音は硬かった。そして一つだけ、柔らかいものがあった。猫の人形だ。それも写真を転写して作ったもの。これだけ印象的なモノなのが並んでいるのだから、見間違う事は無い。確かにレストランにいた男だ。
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