第三章 もう一人の調査員

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 張り込みの基本を忘れ、虎之助は男のことを、姿を隠さずじっと見続けてしまった。  なにしてるんだろう、なんでこんなとこで再び姿を見ることになったんだろう、とあまりに不思議で視線を外せなくなってしまったせいでか、男が虎之助に気付いてしまった。  目が合った。ぽかんとした顔をしている虎之助の姿を見て、男は一瞬身を固めるように動きを止めたが、その後どこから取り出したのかカラのペットボトルを自販機の横のゴミ箱に捨て、ゆっくりとした足取りでその場から離れていった。  偶然ではないな。これが虎之助が抱いた印象である。  あの男もゴンスケの浮気相手であるあの女を追ってきたと思われる。  小さくなっていく男の後姿を眺めていて、ハッと思いついた。 ・・もしかしたら、あの男も調査員なんじゃないか?・・
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