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「さあ、じゃんじゃん食べなさいね。今日はキミのための会なんだから」
焼肉・太郎の見慣れた店内の使い慣れたテーブルの上には、メニューの中でも「上」とつくものばかりがずらりと並んだ。
上タン塩、上カルビ、上ハラミ。いつも食べさせてもらう肉よりも輝いて見える気がするのは気のせいか、と虎之助は目を見開いた。
雇い主である田所弥生がこんなにも豪勢な席を設けてくれたのは、虎之助が当初掲げていた目標を達成したからだった。
石の上にも三年、だからとにかく三年はがんばってやってみようと思う。
そう言ってこのコノミ書店で働き始めてから三年の月日が過ぎたのだ。
フリーターとして肉体労働を三年経験し、次なる三年には異業種で、と求人広告にあった本屋でのアルバイトに軽い気持ちで応募した。個人の書店なら駅ビルに入っているような大きな書店よりは全然楽だろうという計算もあってのことだった。が、面接で知らされたまさかの裏仕事付きに、最初は戸惑う毎日だったが、その裏仕事のほうが店番よりもはるかに面白い。だからここまで頑張ってこられたのだと、上タン塩を一枚網の上にのせながらここまでの日々を振り返った。
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