第三章 もう一人の調査員

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 弥生がこれまで受けてきた調査でも、他所の探偵事務所の調査員とかち合ったことは一度もなかった。  ダブル不倫は数々あったので、もしかしたらそれぞれの家庭から調査依頼は出ていたのかもしれないが、現場で鉢合わせたという出来事はなかった。 「で、そのもう一人の調査員らしき男がいるってどこで確認したわけ?」  まずゴンスケこと谷村海斗と浮気相手らしき女が待ち合わせていたレストランで見かけた事、その後女を尾行して住まいにたどり着いた時にその場に先にいた事を虎之助が話すと、弥生も納得したかのように肯いた。 が、すぐに頭をひねりもした。 「なるほどね・・まあ、可能性は高いけど。でもその男、柳くんが気が付くほど特徴のあるリュックをしょってたのよねえ?それって」  柳くんが気が付くほど、と言われて、思わず虎之助はちょっと待った!と弥生の言葉を遮った。 「所長、僕だってもう3年この仕事してきたんですよ?観察力だってついてきて一端の調査員になってきたと自信持ってるのに。柳くんが気が付くほどって、そりゃないですよ」
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