第一章 石の上にも三年経った

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「ちょっと!まだ乾杯してないのにもう肉焼くのかい!さ、まずは」  強制的にビールジョッキを持たされて、乾杯の音頭を待つ。  あーあーと弥生が声を整えている間にも肉はどんどん焦げ目をまとう。 「ちょっと!早くしなよ!うちの美味しいお肉ちゃんが焦げちゃうじゃないのさ!」  さらに焼き肉屋の女将・みよちゃんから横やりが入る。肉はもう、限界にきている。見かねて虎之助は、すばやく皿の上へ救い出した。 「え~では、柳虎之助君の目標であった石の上にも三年達成を祝して、カンパーイ!」  ガチンと3つのジョッキがぶつかり合う。虎之助、弥生、そしてちゃっかりみよちゃんまでもが乾杯に参加している。  あんたお店の人だろう?と初めの頃はいぶかしく思ったが、今ではごくごく自然な姿だと虎之助はとらえられる。 「さあ虎ちゃん、好きなだけ食べなさいね。ほら、サラダも食べて。野菜はちゃんととらなきゃだめよぉ」  チョレギサラダを取り分けて虎之助の前に置いてくれたみよちゃんは、客が呼んでいるのにもかかわらずちょっと待ってな!と凄みをきかせ、弥生が客のオーダーを代わりに聞いて大将に伝える。  コノミ書店も変わった店だが、この焼き肉屋も負けじと変わっている。  幼馴染の二人はいろんな意味で似た者同士の仲良しなのだ。
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