最終章 人って解らないものなのだ

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「ゴンスケからの残金の支払いが完了したって電話で報告した時に谷村夫人が言ってたけどさ、海斗が猫好きだったなんて知らなかったってよ。まあ、結婚するからってそこまでいちいち確認することもないだろうけど、何年か付き合っている間に気が付かないもんかね。ふとした瞬間に、あれ、この人ってこうなのかな、こういうの好きなのかなとかさ」 「相手を知ろうとする努力をしていないっていうんでしょう?所長は」  その通り、と弥生は人差し指をたてた。 「だいたいさ、お茶してる最中に向かい合ってそれぞれがスマホ見ているカップルとか見ると口が開いちゃうわ。何のために二人で今一緒にいるのよ?今それ必要?考えられん。まあ、こんな事言ったって私らの若い頃とは時代が違うって言われておしまいだけどね」  吐き捨てるように言いたい事言って、弥生はキッチンへと引っ込んでいった。  コーヒーのいい香りがすぐに漂ってきた。 そろそろ三時のおやつの時間か。  一息つこうと店主からの声を待っているとカウンターの上の電話が鳴った。
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