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 「妙な出で立ちの者がおるぞ」  一人が言った。  いや、妙なのはそっちだろう、と思ったが口にはしなかった。何か、まずいことになりそうだと感じたのだ。 「もしや、武蔵か?」  はぁ? 武蔵って?  「うむ、身の丈も6尺はある。そんな大男、滅多におらん。間違いあるまい」  元村の身長は182センチ。プロ野球選手としては普通だろう。大男と言われたのは初めてだ。  「このあたりにいるという噂は本当だったようだ。ここで会ったが百年目。新免武蔵、覚悟めされいっ!」  3人が一斉に刀を抜いた。  「ちょ、ちょっと待てっ!」慌てる元村。「何の冗談だよっ! ドッキリか? デットボールの後に仕掛けるなんて、モラルおかしいだろっ!」  「往生際が()しきぞ、武蔵。吉岡一門を滅ぼしたというは戯れ言か?」  「我々は吉岡伝七郎殿と縁のある者。それ故、おぬしを捜し求めていた。その首、伝七郎殿の墓前にさらしてくれよう」  一人が刀を翻したのを合図に、次々に斬りかかってくる。  「う、うわぁ~!」  元村は逃げ惑う。  「うぬ、足が速いな。体の力はさすがと言えよう」  追いかけて来ながら、一人が言う。  そ、そりゃあ、プロ野球選手だからな……。  ぼやきながらも逃げ続けた。しかし、相手は戦闘に慣れているようで、一人が前にまわり込んだ。囲まれる。  「どうした、武蔵。その手にある妙な得物(えもの)は飾りか?」  元村はバットを見つめた。確かに強力な武器になる。  くそっ! なんだかわからないが、とにかく殺されるわけにはいかない。
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