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その週末、わたしとかやは蛍を見に、電車に乗って山へ行った。山と言っても本格的な登山という感じではなく、里山のようなイメージだ。
ちなみに、わたしは半袖のパーカーにワイドパンツという恰好にした。大事なときだからこそ、自分らしい服を選んだのだ。
「もうすぐで蛍が見えるポイントだと思うんだけど」
横を歩くかやがスマートフォンを見ながら進んでいく。落ち着いた色の花柄のワンピースにサンダルという彼女の出で立ちは、誇張ではなく、天使のように美しかった。
わたしたちはひたすら林の中を歩いた。
「ごめんね、あおい。こんなところまで」
「そんなこと言わないでよ。わたしはかやと遊びに行くっていうだけで楽しいんだから」
「そう、それなら嬉しいけど」
「ところでさ、どうして彼氏くんの代打にわたしを選んでくれたの?」
「どうしてって……親友だからだよ。せっかくなら、一緒に楽しめる人と行きたいと思ったの」
好きだなあ。かやのこういう、何となくではなく、考えをしっかり持っているところ。わたしは改めて彼女に惚れた。
「ありがとう」
わたしが抱きつきたいのを必死に抑えたのは秘密だ。
そういえば、わたしが彼女を好きになったのも、その優しさだったな。
道を調べながら慎重に進んでいく彼女を見て、わたしは走馬灯のように彼女への想いを振り返った。
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