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長く、長く息を吐く。落ち着くんだ。大丈夫。あと二段ある。確かに可能性は半分に減ったかもしれないが、そもそもないなんてことはないんだから何ら心配はいらないさ。
深呼吸をしながら、同時並行で食品を丁寧に冷蔵庫に戻し、一旦扉を閉める。
ちらりと後ろに目をやる。相変わらず楽しそうな弟。見たくもない光景に、すぐ目をそらす。
全く。貪欲に癒しを求めるために冷蔵庫の扉を開け閉めしている私もどうかしているが、そんな姉を嘲笑うように実際笑う弟もどうかしている。もしかしたらこの家族、全員イカれているのではないかとすら思う。
まぁ、良い気分転換にはなった。
もう一度冷蔵庫を見る。
気付けば私は、焦っていた。早く癒しを求めたいばかりに。
首を振る。焦りは禁物。大丈夫。この扉の向こうに、確かにあるのだから。
冷蔵庫の扉を開ける。獲物を狙う目つきで納豆やジャムが並べられた三段目を睨む。ない。ならやることは一つ。
ここまで来た私の手つきに迷いはない。焦りも、多分ない。
だが、元々隙間の多いこの段だ。食品を出すうちに、だんだんと希望が失われていく。
慣れた手つきで食品を戻し、扉を閉める。
やはり、なかった。
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