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初デート?
「麻結、昨日はどうだった?」
梨々花は興味津々に聞いてくる。
「祥が王子様の如く麻結のことを助け出したんでしょ〜?」
そこまで知ってるんだ。ていうか、王子様って。
確かに助けてはくれたけど、その盛り上がったかといえばう〜ん……。少しハモって笑い合ったくらい?
勇気を出して伝えた好きアピールも逆効果だったみたいだし。
「ねぇ、梨々花は彼氏とどんな話してるの?」
「何その質問。もしかして、昨日はダメだったの?」
梨々花の問いに躊躇いつつも頷く。
「会話がなかなか続かなくて。というか祥が割とだんまりで。しかも緊張して変なこと言った気がするし引かれちゃったかも」
「緊張は誰にでもあることだと思うよ。それでも頑張って話しかけたんでしょ」
「うん」
「祥の前でもニッコリ笑って話した?」
「うーん……」
そう言われると自信ないかも。緊張してたし。
「男の子はよく笑う子に好印象を持つんだって」
「そうだよね……」
落ち込んで机に突っ伏す私に梨々花は励ますように頭を撫でる。
「んー、やっぱり打ち解けるには、あれね」
「あれって?」
梨々花はぱぁと顔を輝かせた。
「決まってんじゃない!! デートよ!」
そんな訳で私はB組の教室の前にいる。
今はお昼休みだから教室内にいる生徒は少ない。そんな教室の中にクラスメイトの男子と談笑する祥の姿を見つけた。
「祥いる?」
祥に聞こえるくらいの声の大きさで祥を呼んだ。祥は驚いたように目を見開いた。
私から来るとは思ってなかったんだろう。
私の元へと駆け寄ってくる。
「どうしたんだ?」
「あのね、今度の日曜日、どこか遊びに行かない?」
そう言って数秒、祥は固まっていた。そして考え込むような表情をする。
もしかして嫌だった?言わない方がよかった?
なんで黙るの?
「あ、っとごめん。日曜日は大会なんだ。だから行けない」
「そっか。ううん、それじゃまた今度だね」
さすがに大会は休めないもんね。
断られたことよりも祥の微妙な反応の方がショックで私はトボトボと自分の教室に戻った。
「どう、だった?」
梨々花は私の表情から悟ったのか、控えめに聞いてきた。
「日曜日、大会があるんだって」
「大会?」
「うん。だからまた今度ねって。けどそれよりも祥の反応が微妙で……」
「微妙?」
梨々花は不思議そうに問う。
「デートに誘ったら考え込んでるみたいに無言になって」
「なにそれ、彼女がデートに誘ってるのに酷くない?」
「まるで私とデートするの嫌みたいな……」
私の勘違いだと思いたい。うじうじ考えてる自分が嫌になる。
私は机に伏せて、窓から見える空を眺めていた。
「日曜日に大会なんてなかったはずだけど……」
そんな梨々花のつぶやきは麻結の耳には届かなかった。
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