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そんな状況にも関わらず、彼女の声は明るい。私はその明るさに、確実に救われていた。
渦中の最中でも愛澤さんはすぐにLINEをくれて、私と社長を励ますメッセージを送ってくれていた。
「なんだ、あんたもいたのね」
「愛澤は相変わらずだな」
「ま、箕輪も退職しないのは見直したわ。でもこれから辞める予定?」
「辞めないよ。俺はプロジェクトリーダーだし、チャット機能がああなった責任を感じている。原因究明しようと俺も連日徹夜した。だけど・・・」
箕輪くんが声の大きさを一段落とす。
「宮内さんは知っていますよね。だから今日、こうして声をかけてくれたのでしょう?」
眉を下げて、困ったような笑顔を作った。
「俺のデバイスが原因だったらしいんだ」
「え」
愛澤さんが声を張り上げる。
「もちろん、意図的にそうした覚えは全くない。だけど不注意で最悪なプログラムを組んでしまったのかと、自責している最中だよ」
ため息混じりの台詞。
少なくとも私は思う。箕輪くんがわざと組んだ訳では絶対にないと。
でも胸が騒つくのだ。
この胸の騒めきが、何に対してなのかよく分からない。
「社長に恨みを持っている人間の仕業じゃないかって話もある。恨みはないけれど悔しいと思っていた時期はあるし、社長から怪しまれてもおかしくない立場だからね」
私を見て、諦めたように微笑む。
「私には何を言っているんだかよく分からないけど。あんたがそんな奴じゃないってことだけは分かる」
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