幸せの価値観

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社長の声に揺らぎはない。 「今はここから動かない方がいいだろう。このマンションにいる方が安全だからな。問題解決してきた頃・・・いいか?」 「賛成です」 笑顔になりながら答えると、社長も微笑んだ。 私は社長とならば、どんな場所にいても幸せだと思う。 極端を言えば例え野宿だって。ー・・・まぁそれはさすがに、数日で音を上げるかもだけれど。 そして今日も私たちは、NEサーチのオフィスに出勤した。 会社の状況は何も変わっていないのに、ビルの上の水色の空を見て心が潤う。少しだけ開けた窓から吹き抜けた冷たい風に、清々しさを感じた。 そして社長と私が席に着いたタイミングで、トントンとドアを叩く音がする。 「失礼します」 朝一から、高柳さんが社長室を訪れてきた。 「チャットのハンドルネーム表示を外す仕掛けを施したデバイスが分かりました。さらにそのデバイスは、うちのユーザーの個人情報を他社へ送信していました」 「そうか。どこの企業に送っていた?」 「TR株式会社です。そしてそのデバイスは、NEマッププロジェクトリーダー、箕輪直久のものでした」 社長室の空間だけ時間が止まる。 そんな訳がないと、反論しようとしている自分がいた。
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