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愛澤さんもきっぱり言う。そう、間違いなく私だって。
あの日のことを寛大に許してくれた箕輪くんにお詫びをしたいのもある。どうにか無実の罪を晴らしたい。
それぞれがそれぞれに、ランチメニューを選んで席に着いた。
黙々と食事していた時、ふと、頭にある映像が浮かぶ。
「箕輪くんのデスクって五階だったよね?」
「はい。そうですけど」
以前八時近くに、五階で鳴っていたタイピング音を思い出していた。
「誰かにパスワード教えたりしてない?箕輪くん」
「え、そんなこと普通します?」
愛澤さんが呆気にとられている。
「いくら何でも、箕輪もそこまで馬鹿じゃないよね?」
「いや・・・」
箕輪くんが顎に手を当てて考えていた。
「教えた覚えはないけれどパスワードは四桁だし、見られた可能性自体はある」
「誰?」
前のめり気味に訊ねる。
「でも他人をあまり疑いたくないです。一時期確かに、密になって一緒に仕事していた奴はいますが。俺のパソコンで作業させたこともありましたけれど、人柄的に俺はあり得ないと思っていますので」
「柳井斗真、でしょう」
名前を口にすると箕輪くんは何も答えずに、曖昧に笑うだけだった。
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