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「社長、正気ですか?」
「箕輪のデバイスを使って情報を送った履歴、チャットにバグを引き起こすプログラムを組んだ履歴も残っている。消したつもりだろうが、呼び戻せる技術がこっちにもあるんだよ。甘かったな」
えっ。と一瞬、表情に困惑の色が滲む。
「それならば箕輪さんが犯人なんじゃないんですか?」
「通路側にある箕輪のデスクに、お前が一人座っている映像も監視カメラに映っていた。そしてその日とプログラムが改竄された日付、時間が一致している」
社長が、箕輪くんのデスクでタイピングをしている柳井くんの、監視カメラの映像を流す。
柳井くんは目尻を垂れ下げたまま微笑を崩すことなく、社長のパソコンから流れた映像を見ていた。
「終わりだな、お前」
柳井くんの唇が歪む。
「・・・バレちゃいましたか。まぁいいです。僕が逮捕されたところでNEサーチの業績が底なのは変わらないですし、目的は達成したので満足です」
柳井くんの話す声が、やけにクリアだった。
「なんでこんなことをしたんだ?井川にはあっても、俺はお前に恨まれるようなことをした覚えはない」
「貴方が単純に気に食わなかったんです。ジーグルに迫る新たな検索エンジンサイトが出てくるなんて、誰も思わなかったでしょう。僕はジーグルに入社するだけでも血の滲むような努力をしてきたのに」
にこにこと笑ったまま言うその姿が不気味ではあったけれど、彼の背中に哀愁を感じた。
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