最後の難関

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一山超えた先に、ちょっとした繁華街が見えてくる。繁華街と言っても“田舎の中の”だ。 平坦な道になり、スーパーや有名チェーンの飲食店がぽつぽつと見え始めていた。私の実家はその先にある。 父の事業の羽振りが良かった頃に購入した、この辺だと割と大きな家。 赤い屋根にクリーム色の外壁の二階建て。ベランダは広く、その景色も程々に良い。昔、庭には季節ごとの花が咲き、綺麗に整えられていたことを思い出す。 一見したらそれなりに裕福そうに見えるであろう私の家。でもそれは。 父の事業が失敗してからは、節約節約の生活だった。 「車、この辺に停めて大丈夫か?」 「はい。問題ありません」 二人ほぼ同時のタイミングで車のドアを閉める。 すると玄関先に、父と母が立っていた。弟も他県で働いているから、色々あった夫婦だけれど今は二人で暮らしている。 「いらっしゃい。初めまして」 母が建前と分かる笑みを浮かべて、社長に挨拶する。 「初めまして。詩織さんとお付き合いさせていただいている、蓮見総悟という者です。本日は来訪を受け入れていただきありがとうございます。これ、ちょっとした物なんですが」 社長は銀座にある、高級和菓子店の菓子折りを母に手渡した。 「わざわざ申し訳ないわね。ありがとうございます」
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