俺様社長は悪戯に愛を囁く

最後の難関

社長と私をリビングに通しながら、母は他人行儀な姿勢を崩さなかった。一方父はひと言も話さず、母の後ろから静かに私たちを見ていた。

リビングの真ん中にあるテーブル席へ座る。張り詰めた空気感。

「どうぞ」

母がダージリンティーを社長の前に置く。

「ありがとうございます」と小さく頭を下げる社長。

「詩織は私の大切な娘だから、遠慮しないで単刀直入に聞かせてもらうわね。詩織と真剣なお付き合いをしているの？」

「はい。将来を見据えたお付き合いをさせていただいています」

「蓮見さん、貴方はこれまでとてもおモテになってきたようだけれど。何故うちの詩織とお付き合いしているの？あと･･･他にお付き合いしている女性、いないわよね？」

あまりにもストレートかつ失礼すぎる母の質問に、紅茶を吹き出しそうになる。

交際を始めてから浮気を疑ったことは一度もない。社長は私をとても大切にしてくれていると思うことばかりだった。

最近の喧嘩を除いては、だけれど。