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「僕は一度詩織さんに振られました。お恥ずかしながらその後の二年間は、スキャンダルになっても構わないくらいの不誠実な恋愛をしてきたのは事実です。しかし奇跡的に、僕の告白を詩織さんに受け入れてもらうことができました」
社長が私の母を、一秒も逸らすことなく見て話し続ける。
「今後生涯において、詩織さん以上の女性に出会うことはないです。会社も以前のように、いや、以前以上の業績に持っていきます。必ずお約束します」
母が頭を下げる社長をしばらく見つめていた。そしてその後、視線を父に移す。
父は母と目が合うと俯き気味になり、言葉を発し始めた。
「蓮見くんも聞いているかもしれないが、私も自営業を営んでいて社長だったことがあった。家族を大切にしていたつもりが、仕事の一環を兼ねて、不信感を抱かれるような遊び方をしてしまった。だが誤解を解きたいんだが、愛人を作ったりだとか、そういうことは本当にしていないんだ」
最後の台詞は母に向かって、訴えるように言っていた。
父が私たちを可愛がってくれていた印象はある。だけど朝方までしょっちゅう飲み歩いていたのだ。
せいぜいキャバクラ遊びまでだ、というのが父の主張であって、一人の女性と深い関係性を築いたことはないと台詞から私は受け取った。
だけど母からしたらそれも面白くないことには、変わらないだろうけれど。
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