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理央との出会いを忘れることはないだろう。
「あ、ねえ!! すばる、落ちたよ」
「え?」
入学式の朝、前を歩く男の子が落としたものを拾い上げて、そう声をかけた。
彼が落としたのは、キーホルダー。
青く輝くプレートの中に、描かれていたのはすばるだ。
「ありがと、でも、それプレアデス星団だけどな」
銀縁メガネくんが、ニヤリと笑った。
「プレアデス星団、通称すばる、でしょ? 知ってるよ」
私は自分の鞄についている『おおぐま座の渦巻銀河』のキーホルダーを自慢げに見せる。
まるで彼のキーホルダーとお揃いのように見えるこれは、去年の星空展覧会で買ったもの。
あの場所でしか売ってなかったものだ。
「お! 『おおぐま座の渦巻銀河』じゃん!!」
「うん『ボーデの銀河』とも言うよね」
今度は私がニヤリとして彼を見上げたら、眼鏡の奥の目が嬉しそうに細くなる。
「俺、家に『ソンブレロ銀河』も持ってるぜ」
「え、いいなあ。私、迷って『オリオン座大星雲』にしちゃったんだよね」
他の人が聞いたら、ちょっと引いちゃうような会話が弾んだ。
初対面なのに、こんなに星のことを話せる人、他にいなかった。
それからすぐに二人だけの天文学部を結成したのだ。
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