本編

11/42
前へ
/42ページ
次へ
そんな、分かりにくい嫌味を言われた本人は、分かりやすく驚愕していた。 それなりに、俺の苛立ちは伝わったらしい。 そういえば、こんなにも会長様とバチバチやってる俺を差し置いて、透きゅんは何やってるのかな? 透の方を見やると、昼食に頼んだらしいビーフシチューを、素知らぬ顔で食べている。 俺が見ているのが気配で分かったのか、透はニヤッと馬鹿にした様に笑った。 あ、こいつ殴る。 「お前この俺に楯突くとは、いい度胸してんじゃねーか?」 おっと? 俺、もしかして殴られます? 会長様によって制服の胸ぐらを掴まれた俺は、早速さっき自分が言った事を後悔した。 余計な事は言うもんじゃねーな……と云うか、首が詰まって苦しいっす。 「楯突いた覚えはないんですけどね……おほほほほ〜」 お綺麗な顔を、不機嫌そうに歪ませた会長からフイっと、顔だけ背けて逃げる。 しかし、そんな俺の行動はお見通しの様で、顎を手で掴まれ会長のデコと俺のデコを、ピタッと合わせる謎状況パート2が出来上がった。 いやそんな能天気な事を考える前に、この非常に不味い状況をどうにかしなければ!!!! 「か、会長様! 苦しいので離して、んん……ん"!?」 「ちょ、ちょっ! 龍ちゃん!?」 「龍雅……貴方って人は……」 『きゃあ〜! 龍雅が、さとみんのお口を犯したぁぁあ!』 「龍雅、それはダメ……怜海くんが可哀想……」 口を塞がれた。 ええ、お察しの通り会長様のお口で。 い"や"ぁ!! ちょっとまてぇぇぇぇぇぇえ!?!? 何してくれちゃってんの!? とても、それはとても動揺している俺を、唇を離した会長様が愉快そうに笑う。 ん"ん"っっー! 俺の初キスがぁぁ!! こんな、ヤリチンお坊ちゃまに奪われるなんてっっっ! 怜海くんショック……。 「山谷怜海……だったか?」 驚いて半分脳の機能を停止させていたら、会長様が俺の名前を呼んできた。 いや、それよか生徒会の皆さんも呆れるんじゃなくて、止めて下さいよぉぉぉ! 柳田さん しか、止めてくれなかったし!  双子に限っては喜んでるだろ?? 「おい……聞こえてるのか?」 ていうか今の会話のどこに、キスに至るくらいのアレがあったか? 俺が単に俺様お坊ちゃまにキレて、言い返しただけで口に触れるだけのキスだが、それでもキスされるのは心外中の心外だぞ!? 「おい!」 「何ですかまだ居たんですか? 挨拶は終わりましたか? そうですか? ならとっとと生徒会室へ、帰りやがる事を推奨しますよ?」 俺が中々返事をしなかったのが気に触ったのか、会長様は少し声を荒らげた。そんな彼に捲し立てるよう、この場から去ることをお勧めしてみる。 というか会長様が俺にキスしたせいで、周りが絶叫していてとても騒がしいのだ。 しかも俺は、まだ昼食取れてないんだからねっ!俺の昼食の為にも会長様、早く帰ってよねっ! そんな願いを込めて、頼みの副会長様をみる。 みんな俺の正直過ぎる、早く帰れアピールを受けて度肝を抜かれた様だった。そらそうだろうなぁ……生徒会にこんだけズバズバ言ってるのって風紀委員長しか知らねーし。 「ふふっ、怜海くんの言う通り……挨拶は終わった ……だから、今回はもう帰ろう……? 風紀委員長が、くるかもしれないから、ね……龍雅?」 「あ、ああ……そう、だな」 ずっと様子を見ていた柳田さんが、割って入ってくれた。なんだ、妻か。 さっさとその旦那、回収して下さいな。 呆気に取られた会長様の背中を、食堂の出口へ押していく。他のメンバーはと言うと。 「ぷっ! 龍ちゃんがそんな顔してるの初めて見たぁ!」 「ほんとだ、マヌケ顔ー!」 「さとみんの方が大人だねー!」 「さあ、貴方達帰りますよ。では山谷くん、放課後お待ちしております」 それぞれ言いたい事を言い捨て、帰って行った。 いや、俺の時間返して?
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1652人が本棚に入れています
本棚に追加