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そんな、分かりにくい嫌味を言われた本人は、分かりやすく驚愕していた。
それなりに、俺の苛立ちは伝わったらしい。
そういえば、こんなにも会長様とバチバチやってる俺を差し置いて、透きゅんは何やってるのかな?
透の方を見やると、昼食に頼んだらしいビーフシチューを、素知らぬ顔で食べている。
俺が見ているのが気配で分かったのか、透はニヤッと馬鹿にした様に笑った。
あ、こいつ殴る。
「お前この俺に楯突くとは、いい度胸してんじゃねーか?」
おっと? 俺、もしかして殴られます?
会長様によって制服の胸ぐらを掴まれた俺は、早速さっき自分が言った事を後悔した。
余計な事は言うもんじゃねーな……と云うか、首が詰まって苦しいっす。
「楯突いた覚えはないんですけどね……おほほほほ〜」
お綺麗な顔を、不機嫌そうに歪ませた会長からフイっと、顔だけ背けて逃げる。
しかし、そんな俺の行動はお見通しの様で、顎を手で掴まれ会長のデコと俺のデコを、ピタッと合わせる謎状況パート2が出来上がった。
いやそんな能天気な事を考える前に、この非常に不味い状況をどうにかしなければ!!!!
「か、会長様! 苦しいので離して、んん……ん"!?」
「ちょ、ちょっ! 龍ちゃん!?」
「龍雅……貴方って人は……」
『きゃあ〜! 龍雅が、さとみんのお口を犯したぁぁあ!』
「龍雅、それはダメ……怜海くんが可哀想……」
口を塞がれた。
ええ、お察しの通り会長様のお口で。
い"や"ぁ!!
ちょっとまてぇぇぇぇぇぇえ!?!?
何してくれちゃってんの!?
とても、それはとても動揺している俺を、唇を離した会長様が愉快そうに笑う。
ん"ん"っっー! 俺の初キスがぁぁ!!
こんな、ヤリチンお坊ちゃまに奪われるなんてっっっ! 怜海くんショック……。
「山谷怜海……だったか?」
驚いて半分脳の機能を停止させていたら、会長様が俺の名前を呼んできた。
いや、それよか生徒会の皆さんも呆れるんじゃなくて、止めて下さいよぉぉぉ!
柳田さん しか、止めてくれなかったし!
双子に限っては喜んでるだろ??
「おい……聞こえてるのか?」
ていうか今の会話のどこに、キスに至るくらいのアレがあったか?
俺が単に俺様お坊ちゃまにキレて、言い返しただけで口に触れるだけのキスだが、それでもキスされるのは心外中の心外だぞ!?
「おい!」
「何ですかまだ居たんですか? 挨拶は終わりましたか? そうですか? ならとっとと生徒会室へ、帰りやがる事を推奨しますよ?」
俺が中々返事をしなかったのが気に触ったのか、会長様は少し声を荒らげた。そんな彼に捲し立てるよう、この場から去ることをお勧めしてみる。
というか会長様が俺にキスしたせいで、周りが絶叫していてとても騒がしいのだ。
しかも俺は、まだ昼食取れてないんだからねっ!俺の昼食の為にも会長様、早く帰ってよねっ!
そんな願いを込めて、頼みの副会長様をみる。
みんな俺の正直過ぎる、早く帰れアピールを受けて度肝を抜かれた様だった。そらそうだろうなぁ……生徒会にこんだけズバズバ言ってるのって風紀委員長しか知らねーし。
「ふふっ、怜海くんの言う通り……挨拶は終わった
……だから、今回はもう帰ろう……? 風紀委員長が、くるかもしれないから、ね……龍雅?」
「あ、ああ……そう、だな」
ずっと様子を見ていた柳田さんが、割って入ってくれた。なんだ、妻か。
さっさとその旦那、回収して下さいな。
呆気に取られた会長様の背中を、食堂の出口へ押していく。他のメンバーはと言うと。
「ぷっ! 龍ちゃんがそんな顔してるの初めて見たぁ!」
「ほんとだ、マヌケ顔ー!」
「さとみんの方が大人だねー!」
「さあ、貴方達帰りますよ。では山谷くん、放課後お待ちしております」
それぞれ言いたい事を言い捨て、帰って行った。
いや、俺の時間返して?
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