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嵐またの名を生徒会執行部御一行が寄り道して行った昼休みも終わり、ついでに今日の最後の授業も終わろうとしていた。
因みに今の教科は理科で、生物学やってます。
この学園は1つの教科でも単元等で教師が結構、頻繁に変わる。だから、理科の先生って感じではなく、生物学の先生、化学の先生って感じで呼ばれる事もある。まあ結局、専門的に理科なのは変わらないのだけど。
そうこうしている内に、ホスト教師九重の授業がチャイムによって遮られた。
時計をチラ見した九重ティーチャーは、『時間か』と呟き、ホワイトボードに文字を書くのを止めた。
「時間になったから纏められなかった分、それは課題にする。1行でもいいから自分の力で、今日の授業の纏めを書いて必ず提出すること。単位がギリギリのヤツは、多少はマケてやるから忘れるなよー?」
そう気だるげに言って、九重Tは今一度教室を見回した。ピアスとか、アクセサリーをジャラジャラ付けてんのに、こういう所は教師って感じでとても萌える。何だかんだ言って、担任を持つほど面倒見がいいのは攻め属性か?
でもやっぱ……リバ希望で。
色々と考えながらノートを書いていると、九重先生から声をかけられた。
やべ、なんか声に出てたかな。
妄想中で真顔だった顔に微笑を貼り付け顔を上げると、教卓近くにいた筈の九重先生は俺の席の近くまで来ていた。
何か気に障ることでもしたか?と思案している俺をよそに、九重先生は俺の書きかけのノートをひったくりペラペラと中身を見だした。
え、ちょ……照れるぅぅ。いや今日の授業の纏めを、ノートに書いてたんだけど……?
先生、あと少しなんで返して貰っても?
「あの……九重先生?」
「…………」
「返事がない……ただの屍のようだ……」
「うるさい」
「ごめんなさい」
酷い……女王様さながらの理不尽さで、俺のライフはもうゼロです。嘘です。真剣な顔をした九重先生は、とてもカッコイイです。
理想のリバ顔で美味しいです。
「怜海……お前、毎回こうしてるのか?」
「……ん? 何がです?」
「コレだ」
そう言って、俺のノートを指で指す。
そこにはいつも通りの、俺のノート。
左ページは、教師の板書のうつしをそっくり其の儘。そして右のページには、コーネル式と言われるノート術を用いて、自分なりに砕いた復習と纏めを書いている。
なんだ……? アレか?
復習するノートと板書をうつすノートは、別にしろ的なタイプだった?
「えっと……そうですけど、すみません?」
「なんで謝る?」
「いや復習するノートは、分けた方が良かったのかなーと思って……」
今の俺は、まさに戦々恐々といった様子だろう。
「なんだそれ? 別に自分がややこしく無いなら、分ける必要ないだろ? というか、そんな事どうでもいい」
そう言って九重先生は俺のノートを借りると言って、授業の挨拶をして出ていってしまった。
……BLの妄想の走り書きとかしてなかったよな?したような消した様な記憶があるが、見られても何も言われないだろ?
とりあえず俺は、これから生徒会という名のダンジョンへ行く為、心の準備を整える必要がある。
役職持ちになったと言う事は、授業の免除をされる。その面で、成績が良いと言う点はいい事である。逃げの一手として成績不良者が、役職にはなれない仕組みなんだろう。
「はぁ……生徒会こえーよ」
「山谷くん、顔色悪いけど大丈夫?」
ん? 爽やかくんか、珍しく俺に声をかけてきた。というか、この教室で俺に話かけてくる人って、巻くんか、数人の俺の親衛隊だとか言っているゴリラ共くらいだよ。
「……漣くん、心配ありがとう。大丈夫、生徒会室に行くのがちょっと気まずいだけ……」
そうなんだよ、昼間のあの事がなけりゃ大分マシだったんだろうけど。見るからに項垂れる俺に、漣くんは爽やかスマイルで慰めてくれる。あぁ……神よ、爽やか攻めの御加護を!!
「ああ、昼間の……大変だったねアレ。あ、もし山谷くんが良かったら、生徒会室近くの図書館に用があるし一緒に行かない?」
「え!? いいの……!行く!」
俺は漣くんのおかげで、気が重かった心の準備が一瞬にして出来上がった。
今、勇者の気持ちが分かった気がする……1人より2人増えたら安心、心配ないや……ってか?
いい歌詞書くなぁ?
俺は、放課後特有ののクラスがだらけきった時間帯になり、数冊の本を持った漣くんに声をかける。相変わらず、川のせせらぎの様な爽やかさだ。茶色の髪色で前髪をウェーブにして遊ばせ、センター分けにしている。
短めの襟足も、その顔面によってよりカッコよく見える。確か、漣くんって5本指に入るくらいには、成績が良かったっけ?
顔も良くて成績優秀って、優等生くんかよ。
(自分の事を棚に上げている)
「漣くん! 準備出来た?」
「うん、行こうか」
漣くんと一緒に教室を出る。
俺が漣くんに話しかけた時点でチワワくん達が、きゃあきゃあ言っていたけど……廊下に出るとそれが連鎖する様に広がっていく。
……俺、なんかした?
イケメンと一緒にいるだけでこんなに絶叫されるとは……泣くよ?
「はは、さすが山谷くんだね。廊下に出るだけで、みんなから注目されるとは。まあ、こんなに美人さんなら仕方ないの……かな?」
いやいや、イケメンくんが何言っちゃってんの?俺は思わず、漣くんを凝視したまま固まる。
その顔面で何を言ってるんですの?
「そ、そうなのかな? ……漣くんがカッコいいからだと思うよ……?」
最後の方、声が震えたのは許して欲しい。BLを見るのは好きだが、その対象になるのは苦手なのだ。その上、それっぽい事を言わないといけない雰囲気だったから思わず、だ。
「翔太」
「……はい?」
「ふふ、漣って言い難いでしょう? だから、翔太って呼んで欲しいなって」
き、急にどうした!?
爽やかくんが、少し色っぽく口元を緩めたぞ??
「い、いいの……?」
「うん。俺ずっと前から、山谷くんと仲良くなりたいって思ってたからさ。よかったら俺も山谷くんの事、名前で呼んでもいい?」
そう言って、漣くんは俺の顔を覗きこんでくる。顔がいい+イケボで恥ずかしさに、顔に熱が集まるのが分かる……今きっと顔が赤いだろう。
なるほどな……周りを見れば騒ぐチワワくん達。こんだけ人が見てて断れる訳ないよなぁ……なんだ、しっかり逃げ道塞いで来てんじゃん。
でも、俺だけ顔を赤らめて恥ずかしい思いをするなんて、不公平だよな?
「翔太、俺の事も怜海って呼んでくれたら嬉しい……なんて」
「………っ!?」
俺はイタズラに、いつもここぞという時に見せる『必殺︰優等生スマイル』ではなく、自分の顔面の良さを最大限活かした、『必殺︰自分のお願いを必ず通したい時スマイル』を選択して上目遣いで翔太を見る。
翔太は俺の極上()の笑みを見て、顔を赤くして固まった。
わははは!
見よ!!
俺の顔もさながら、そこら辺のオス共には負けてないって事だ!
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