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カチカチとマウスのクリック音と、俺の苦しむ声が響く俺の寮部屋。
オシャレなHPを創ると息巻いていたのが、嘘みたいにテンションがだだ下がりしていた。
いや、だってさ! 思ってた10倍は、色合いやら配置とか難しいんだよ……!! センスはある方だと自分では思ってたんだけど、それは妄想だったらしくて。
センスなんて、俺の中には存在してなかったようだ。努力は才能に勝てない的な、アレを感じた。
「はぁ……取り敢えずできたけど……姉ちゃんに最終チェクして貰おうかなぁ」
俺はそう呟きながら、メールでファイルを姉ちゃんに送り付けた。出来る姉のことだ、察して色々修正所を教えてくれるでしょう。
俺はある程度、荷物を纏めてから寝る事にした。寝る頃に朝の4時になっていたのは、言うまでもない。完全に寝不足で迎えた翌日は、えげつない頭痛と目眩に襲われた。
そんな俺は、最悪の気分で職員室に来ていた。
用はアレだ、HPの変更の許可を貰いにきた。
九重先生を探して、声を掛けると色香を纏わせた様なホストが目の前に現れる。
いや、九重ティーチャー貴方、朝から働いていい人じゃないよ。
夜のお仕事するべきよ?
「怜海、こんな時間にどうしたんだ?」
「おはようございます。そのことなんですけど……生徒会の仕事っていうか、広報仕事の事について許可が欲しいなと……」
俺は学園のHPについての話を九重先生にした。
すると、あっさりOKとのこと。
「あ、ちょうど良かった。怜海、この資料を今日の放課後までにやって出してくれ」
「うぇー〜、俺がですか?」
「あぁ、頼んだぞ?」
九重先生は、俺の頭を軽く撫でると職員室に戻って行った。いやいや、イケメンな行動で誤魔化しても、俺は仕事を増やされた事には騙されんぞ?
なにサラッと、頼んだぞ(イケボ)って逃げてんの?
「……おれ不憫だ」
寝不足の上に昨日から、脳を酷使し過ぎてオーバーヒート寸前だぁぁ……!
それでも、と覚悟を決めて生徒会室に入れば、ソコには鋭い眼光をこちらに向けて会長席に座る男がいた。そう生徒会長様が……なんでいんの?
今、結構な早朝よ? 朝の6時よ?
なに、会長っておじいちゃんなの?
「なんだお前か、なんの用だ? お前に回す仕事はないぞ?」
「……いや、生徒会の仕事って主に会長と副会長、庶務が処理するものが殆どでしょう……わざわざ、俺に回さなくて良いんですよ!!」
「ぎゃあ、ぎゃあと朝っぱらから煩いぞ? 用がないなら帰れ」
「……ひっでぇ、用ならありますよ。仕事です」
「あ"? 仕事?」
「なぜキレたし……そうですよ、仕事! さっき、九重先生から渡されました。今日の放課後までに出せって」
俺は言いながら、会長の目の前で書類をヒラヒラさせる。そんな俺をみて会長は、鬱陶しそうに眉間に皺を寄せながら再びPCに向き合った。
「お前それ、いいように使われてんぞ?」
会長は、PCから目を離さずに俺に言ってくる。
まあ、言いたい事は分かる。
「……分かってますよ。だってこの書類、明らかに教師か生徒会長の権限がないと、決められない数値とかありますもん」
「分かっててやってんのか?」
「俺だってやりたくないですよ! あんな、ついでみたいに渡されて、生徒会メンバーになったと言えど、流石にイラついてますしね!?」
俺は早く終わらせて、保健室で寝ようかななんて思いながら、作業をやっていく。
会長と2人だけの時間……中々に気まずいなぁ。
朝からイケメンを2体見れた事は、いい事と割り切ってしまおう! それよりも、俺は頭が痛い!
「……終わったぁ」
「そういえばお前……コッチの寮に移ってくるの、今日だったか?」
小さく呟いた俺の言葉を皮切りに、会長が話しかけてきた。そうか、寮が変わったら学年は違うが、この生徒会メンバーとか委員会と同じ棟で過ごすのか……なんだかカロリーが高ぇな。
「そうですね。荷物は昼の内に、寮のスタッフさんが運んでくれるらしいです」
「そうか、なら荷物の整理手伝ってやろうか?」
会長には珍しい事を言われ、俺は思わずやっていた作業から、会長へと視線をやった。
けど、会長は言葉とは裏腹にドス黒い笑みを浮かべていた……。
これは言葉通りに受け取っちゃいけねぇや。
それに本当に整理してくれるってなっても、BL本が凄いことになってる。
それを隠す迄は人は入れられない。
「結構です」
「ふーん、なんでだ?大変だろ?」
あ、目が獣だ……答えを言わなきゃ襲うぞって顔してる。ひぇぇ……怖いよ、お母さーん!
エロ本があるからダメだとは言えないしなぁ……こういう時は、BL本知識に頼るしかないか?
碌なもん学んでないけど、脳内には何パターンか答えはある。
よしっ!!
ここはチャラ男受けから学んだ、答えを使おう!
「会長〜? 俺も男ですよ……察してください?」
ドヤァァ!
コレなら踏み込みにくく、聞きにくいだろ!
「ほーう? 優等生くんかと思ってたが案外、遊んでんだな?」
「なに言ってるんです? 優等生にも、息抜きは必要ですよ」
「じゃあ、俺の息抜きも手伝って貰おうか?」
あ、やべ……相手の解釈違いにより作戦失敗!!やっべぇ、やっべぇ! なんか俺が部屋に男連れ込んでるみたいな解釈されてないですか!?
いや、会長様?
制服のボタン外しながら、コッチ来ないでぇぇ!
会長は俺の元へとにじり寄って来たと思えば、俺の手を掴んできた。
会長は自分のシャツを胸元だけはだけさせ、立派な胸筋に素肌のまま俺の手を当てた。
ワオ……素敵な筋肉だこと!
っっじゃなくて!!!
なに? 何なに!? なんなんだ、この状況!?
「……ここ生徒会室ですよ? あんまりふざけた事するなら、この素敵なみぞおちに一発入れますよ? 離れてください。今おれ、体調と機嫌が最悪なんで」
そう言って、会長を思いっきり突き放す。
実際、頭痛と目眩で倒れそうである。
会長は俺に吹っ飛ばされて、尻もちをついていたが。それは自業自得として。
書類を持って、逃げるように生徒会室から出た。
取り敢えず会長は、いつか一発だけビンタをかましてやるっっ!!!
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