本編

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放課後。新入生歓迎会の宣伝をする為、生徒会新聞を作成していると、王道だが完全に頭から抜け落ちていたある来客がやってきた。 そう、風紀委員長だ。俺とした事が完っっ全に、その尊き存在を忘れていた。 「邪魔するぞ、生徒会」 「あ? ……風紀委員長サマが何の用だ?」 生徒会室に入ってきた風紀委員長と、会長が一瞬で睨み合う。ウチの学園も派閥争い的なのはあるらしく、話によるとこの2人は家柄からあまり仲がよろしくないらしい。 おっと、この2人の会話が進む前に風紀委員長様の事を紹介しておこう。 ザ・ワールド!! この麗しき風紀委員長様の名前は、西園寺 (さいおんじ) 楓李(ふうり)さん。 スラリとした身体に冷たい眼光、それでいて爽やかな印象を受ける水浅葱(みずあさぎ)色の髪の毛。 清廉潔白と云う、風紀委員会のスローガンに合う容姿をした人物だ。 身長は180cmで彼の親衛隊による情報だと、西園寺さんはクォーターとの事。 まぁ、簡単に言えばイケメンって事である。 今、この生徒会室の顔面偏差値だけで、世界とれる気がしてきた。 「新入生歓迎会の見回り及び、規則違反を冒した場合の処罰内容の確認に来た」 「……そうか、適当に座れ」 そう言って会長と副会長、委員長が話し始めた。俺はその様子を覗き見ながら、新聞を作成していく。 『今年の新入生歓迎会は"鬼ごっこ"!?』 見出しはこんなもんでいいか。でもこの内容だけじゃ流石に、一面は埋められないだろうなぁ。他になにかいい方法は……あ! 俺は自分のスマホを探すと、会長達が会議をしている様子をカメラの抑える。 カシャッと数枚撮る頃には、3人とも此方を向いて不愉快そうにしていた。 いや当たり前か、アッチからしたら堂々と盗撮してるに近しいんだし。 「山谷くん……何をしているのですか?」 「あ、副会長……そのままの笑顔でいて下さい」 「は?」 ───カシャッ 「おい……盗撮とはいい度胸だな?」 俺がもう1枚撮ろうと、目線を会長に戻した瞬間に胸倉を掴まれた。 そして、青筋を立てた会長とエンカウントする。 あ、やべぇ。コレは殺され……る??? 首を絞められる覚悟を決めた次の瞬間、目の前から会長が引き摺られて視界から消えた。 え?何事? 「学園内での暴力行為は、規定違反とし1日から1ヶ月の謹慎処分となる。……わざわざ会長自ら、規定違反をしにいくのか?」 ああ……なるほどですね。 風紀委員長様が助けてくれたのですね……ありがとうございます? 会長はとても怖いお顔で、風紀委員長様を睨んでいるけども。 「で、お前は新しく入ったという2年生か?」 「あ、はい。広報に任命されました、山谷怜海です。以後お見知りおきを?」 俺はお金持ちのおぼっちゃま達が、好みそうな挨拶をしてみる。というか、ここのおぼっちゃま達には下手にでときゃ、殆ど間違いはない。 まぁ、たまに庶民が! って罵られる事を除けばだけど。 「そうか……任命されるくらい賢いならこの学園内での盗撮は、それ相応の処罰が与えられる事は知ってるだろう?」 「あー……ハイ、シッテマス」 忘れてたァァァァァ!! いやいや、もう手遅れじゃん!?  処罰ってなんだっけ?  暴力行為よりも軽かったから……学園内の掃除とか? え、なんだっけ? あ、思い出した。 色々とブラック委員会と噂の、風紀委員会の雑用だ! 流石だ! よく思い出したぞ、俺。 「で、言い訳を聞こうか?」 「あーっと……そうですね。広報の仕事として生徒会の活動をある程度、詳細に伝える新聞を作成しておりまして……その際に使う写真を撮っていた次第ですね。え、えーと……なるべく自然体のものを撮りたくてですね……?」 俺は、恐る恐る全てを正直に話す。 この人に嘘はついちゃいけねぇって、俺の心のじっちゃんが言ってる。 その証明に、疑うように風紀委員長様の眉間にシワが寄っていく。オデ、怖いっす。 「そうだったのか。なら盗撮としてではなく、仕事として認めてやろう。次からは事前に言うように」 「すみません。ありがとうございます!」 お許しが貰えたので、俺はついでに委員会から知らせる事はあるか聞いてみる。 まぁ、委員長さんと話せる機会があるなら話したいって云う、不純な動機しかないがな! 「生徒会の新聞なんだろ。他の委員会は関係ないと思うが?」 「会長……その関係ないと言った委員会を纏めるのは、なんという組織ですか?」 「……チッ」 俺の考えている事がわかったのか、会長は悔しそうに舌打ちをした。 各委員会を最終的に纏めるのは生徒会なのだ。 会長もそれを分かっていて、言った節がある。 でも俺の不純さを、そんなゴリ押しで誤魔化せるわけなかろう? 俺と会長の目線だけの静かなる攻防のやり取りを見て、風紀委員長はどこか勝ち誇ったように笑っていた。 会長×風紀委員長、風紀委員長×会長。 コレはうまいな!!! ケンカップルか!? ありがとうございます! 「はぁ……理由は分かりました。山谷くんシャッター音は流石に切ってください、邪魔になりますので」 「あ、はい」 「風紀委員会からは、規定違反者は謹慎処分となるとでも書いておいてくれ」 2人はそう言うと再び会議を再開した。優秀な部下を持つと、上の者は楽で良さそうだなぁ。将来は社長×秘書的な展望か? もちろん、社長は会長で秘書は副会長を希望します! そんな事を妄想していたからか、作成中の新聞は会長の赤と副会長の深緑カラーの、ド派手な新聞が出来上がりつつあった。 ん〜、センスが来い。 仕方なく生徒会新聞の第1号は、会長の瞳と髪色の赤をワンポイントに入れたデザインにしよう。 そもそも、新聞ってカラーじゃなくてもいいのでは……と俺の中の庶民が訴えて来ているが、無視しておこう。金持ち学園の事だ、色々派手にやりたいのだろう。 あー、そうだ新聞が出来たらホームページの変更と……更新をしておくか。 最近、なんか学園内の行事とかあったかな。 新学期が始まったばかりだし、1年の教室とか食堂とかを撮影して載せて置けば、親御さん達にも雰囲気が伝わるかな? 人がいない時に撮り回るか……撮るとしたら土日かなぁ? oh......さらば俺の休日。
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