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side 山谷怜海の親衛隊 新栄 葵
正午に差し掛かり、新入生歓迎会が終わった我々は教師が来るまで教室でだらけています。
当然、1日中走り回っていたので、殆どの者が疲れ切った顔をしていますね。
もちろん、僕も流石に疲れました。
しかし開会式や閉会式に、一目だけでも山谷様のお顔を拝む事が出来た為、疲れなど一瞬で過ぎ去りました。
ええ、ええ、噂によるとゴリラと有害な猿共が、山谷様を追いかけ回したと聞いております。
当たり前ですが、それでも山谷様はその運動神経で逃げ切り、授業の免除権を獲得されておりました。
取り敢えず山谷様を追いかけ回したという猿どもは、名前をリストに連ねて隊長へ回します。
おのれ山谷様をおのがものにしようとする、身の程知らずめが……。
──おっと、失礼。この話は置いておきまして。
先程、山谷様の事が一瞬だけ、頭から抜けて仕舞うような事件がありました。
それは黒毬藻改め、巻が別人になっているのです。モサかった容姿は突如として、見たこともないような美しさを持つ、イケメンへと変貌していました。
クラス中が、ハテナマークを浮かべた事でしょう。
しかし、佐藤さんや漣さんと話す黒毬藻は……いえ、巻は黒毬藻と何ら変わりがないのです。いつものように不快な声量で話し、豪快な程の笑顔を浮かべています。
身綺麗にするだけで、こんなに印象が変わるのですね?
まあ、山谷様を崇拝する僕としては、クラスメイトの1人や2人が突然イメージチェンジしたとて、どうでもいいのです。
しかし……周りの者たちは違うでしょうね。
すでに巻に対して、皆の対応がいつもと違うのがよく分かります。
全く顔が綺麗だからって、すぐに推しを乗り換えるのは如何なものかと?
まあ、完全に同族嫌悪です。
ええ、ええ、認めます。
僕も、巻の顔面美にやられました。
しかし、山谷様が本命。巻へと推しを増やすこともしませんので、皆様ご安心を。
この学園は面食いが非常に多いので、巻の安全ももうこの学園には無くなったのですね。
嘆くことが正解なのか、はたまた羨むことが正解なのか……。そのケツを追って被害者が加害者となり、加害者が被害者となる日々が始まりそうです。親衛隊の結成も早そうですね。
とはいえ、山谷様の邪魔にならなきゃ、どうでもいいのです。
そんな事を考えていたら、九重先生と共に山谷様が戻ってらっしゃいました。
ああ、九重先生と話す山谷様は、小さな子の様で可愛いらしいです。きゃらきゃらと笑う姿も、全てが愛らしいです。
ん? 誰ですか?
『夫婦助かる』なんて言ったのは?
貴様のシャーペンに、何回ノックしても芯が出てこない呪いをかけてやりますよ?
気持ち程度に、キッと周りへ威圧をして山谷様を観察します。
ああ──山谷様を呼ぶ、元黒毬藻の声がうるさいですね。
アイツのシャーペンにも呪いが必要か?
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