本編

7/42

1624人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
side 転入生 巻 優太 目の前には、豪華絢爛って言葉がピッタリの建物……学園が広がっている。 叔父が理事長を勤めており、前々から話は聞いていた。男子制の金持ち学園で話を聞けば聞くほど、叔父さんの趣味じゃねぇかとも思わなくない。とは言えこの学園はエリートを輩出している、実績もしっかりとある学園だ。 中学時代にあまり学校やお勉強と、仲良く無かった俺にとっては身に余りまくる場所だ。 「…………しかし、金持ち学園って出入りするだけの門に、こんなに装飾をつけるのか。てか、門開かねーし」 さっきから門横の、高級感溢れるインターホンを押すが誰も出てこない。 未だ開かない、無駄に装飾の多い門を睨みつける。……カツラを被って暑いせいか、メガネが曇ってきた。なんで変装しているのかって? そうする事が、この学園に入る条件みたいなものだったんだよ。あと理事長曰く、俺の銀髪や碧眼は目立つらしくハーフである事自体、珍しいのだという。 まぁ、変に目立たないに越したことはないないが、それでもこの格好は違う意味で目立つんじゃねぇのか? そんな事を考えて時間を潰すが、目の前の門は一向に開かない。俺は仕方なく、ご丁寧に登りやすく装飾がある門をよじ登る。 とんっと飛び越えて、玄関入口の方を見遣れば向こうから、3人の人影がこちらに向かって来ている。なんだよ、もう少しだけ待ってれば人が来たのか。まぁ……いいや。 その3人のうちの真ん中を、まるでランウェイを歩く様な優雅さでこちらに向かって来る、深く青みがかった緑の髪の人物。 思わず目を奪われるが……浮かべている笑顔が不気味過ぎて鳥肌がたった。 「おやおや……まさか飛び越えたのですか? まあ、いいです。私はこの学園の、生徒会副会長を務めております、(いずみ)颯太(そうた)と云います」 案内をさせて頂きますと、とても礼儀正しく不気味に笑う副カイチョーさん。 やっぱ、なんか気持ち悪いなその笑い方、気ィ使ってんのか? 「えー、と。副カイチョーさん? 無理して笑わなくていいっすよ? 何ていうか……その、気持ち悪いんで」 思わず正直な事を言ってしまった。副会長の両隣に立つ、補佐的な2人が俺を睨みつける。 まぁ、そうだわな……ははは。 転入早々、やらかしたなぁコレ。 そんな冷や汗をかいている俺をよそに、副会長さんは不敵に笑っていた。さっきの顔とは違う? 「まあ、余計な事でしたね。取り敢えず、案内?よろしくお願いします」 「確か、優太と云いましたね? ……気に入りました」 「えっ、ちょ……ま」 突然、副会長は薄ら笑みを浮かべて、俺の腰に手を回しガッチリとホールドする。 やべぇ……俺の中の()が、全力で逃げろと警報を鳴らしている……。 身を捩り抜け出そうとするが、その度に服の中へと少し、体温の低い手を入れてきやがる。 そして耳元に口を近付けると、吐息混じりにこう囁いた。 「堂々とあんな事を言われたのは、初めてですよ……気に入った者には、印を付けておかなければいけませんね?」 そう云うと、何を思ったのか副会長は耳元から顔を離した。そして後頭部から抱き締めるように、俺の頭を固定する。 ゑ? しまった、と思ってももう遅かった。 段々とお綺麗な顔が近付いてきて、唇を副会長の唇で塞がれていた。 「ん"ン……!!!」 抵抗して副会長の胸元を思っいきり押すが、曲げた状態の腕では十分な力を入れ、押し返す事が出来なかった。 それどころか、抵抗すればする程に副会長の舌が口内へ入ってくるっっ………ナメクジが口の中を動き回ってるぅ!!!! くちゅくちゅと水音が脳内に響くと同時に、頭の中はナメクジでいっぱいになる。 口の中の甘い感覚と、脳内のナメクジの映像がマッチせず気持ちが悪くなる。 「ん……っ…やめっ…!」 副会長が角度を変え、再び口の中に舌を入れて来ようとするその一瞬の隙に、俺は思い切り副会長を押し返した。 「ふ……もっとしっかりと、嫌がってくれたら楽しめたのですが、今日はこれくらいにしておきましょう」 「はァ"?」 俺は満足そうに踵を返す副会長をみて、殺意に近い怒りを覚えた。冗談でも不快すぎる仕打ちに、頭に血が上っていく。 そんな俺に対して副会長は、何処と無く嬉しそうな微笑を浮かべていた。 てか……俺のファーストキスを返せ……殴るぞ?
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1624人が本棚に入れています
本棚に追加