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side 転入生 巻 優太
目の前には、豪華絢爛って言葉がピッタリの建物……学園が広がっている。
叔父が理事長を勤めており、前々から話は聞いていた。男子制の金持ち学園で話を聞けば聞くほど、叔父さんの趣味じゃねぇかとも思わなくない。とは言えこの学園はエリートを輩出している、実績もしっかりとある学園だ。
中学時代にあまり学校やお勉強と、仲良く無かった俺にとっては身に余りまくる場所だ。
「…………しかし、金持ち学園って出入りするだけの門に、こんなに装飾をつけるのか。てか、門開かねーし」
さっきから門横の、高級感溢れるインターホンを押すが誰も出てこない。
未だ開かない、無駄に装飾の多い門を睨みつける。……カツラを被って暑いせいか、メガネが曇ってきた。なんで変装しているのかって?
そうする事が、この学園に入る条件みたいなものだったんだよ。あと理事長曰く、俺の銀髪や碧眼は目立つらしくハーフである事自体、珍しいのだという。
まぁ、変に目立たないに越したことはないないが、それでもこの格好は違う意味で目立つんじゃねぇのか?
そんな事を考えて時間を潰すが、目の前の門は一向に開かない。俺は仕方なく、ご丁寧に登りやすく装飾がある門をよじ登る。
とんっと飛び越えて、玄関入口の方を見遣れば向こうから、3人の人影がこちらに向かって来ている。なんだよ、もう少しだけ待ってれば人が来たのか。まぁ……いいや。
その3人のうちの真ん中を、まるでランウェイを歩く様な優雅さでこちらに向かって来る、深く青みがかった緑の髪の人物。
思わず目を奪われるが……浮かべている笑顔が不気味過ぎて鳥肌がたった。
「おやおや……まさか飛び越えたのですか? まあ、いいです。私はこの学園の、生徒会副会長を務めております、泉颯太と云います」
案内をさせて頂きますと、とても礼儀正しく不気味に笑う副カイチョーさん。
やっぱ、なんか気持ち悪いなその笑い方、気ィ使ってんのか?
「えー、と。副カイチョーさん? 無理して笑わなくていいっすよ? 何ていうか……その、気持ち悪いんで」
思わず正直な事を言ってしまった。副会長の両隣に立つ、補佐的な2人が俺を睨みつける。
まぁ、そうだわな……ははは。
転入早々、やらかしたなぁコレ。
そんな冷や汗をかいている俺をよそに、副会長さんは不敵に笑っていた。さっきの顔とは違う?
「まあ、余計な事でしたね。取り敢えず、案内?よろしくお願いします」
「確か、優太と云いましたね? ……気に入りました」
「えっ、ちょ……ま」
突然、副会長は薄ら笑みを浮かべて、俺の腰に手を回しガッチリとホールドする。
やべぇ……俺の中の男が、全力で逃げろと警報を鳴らしている……。
身を捩り抜け出そうとするが、その度に服の中へと少し、体温の低い手を入れてきやがる。
そして耳元に口を近付けると、吐息混じりにこう囁いた。
「堂々とあんな事を言われたのは、初めてですよ……気に入った者には、印を付けておかなければいけませんね?」
そう云うと、何を思ったのか副会長は耳元から顔を離した。そして後頭部から抱き締めるように、俺の頭を固定する。
ゑ?
しまった、と思ってももう遅かった。
段々とお綺麗な顔が近付いてきて、唇を副会長の唇で塞がれていた。
「ん"ン……!!!」
抵抗して副会長の胸元を思っいきり押すが、曲げた状態の腕では十分な力を入れ、押し返す事が出来なかった。
それどころか、抵抗すればする程に副会長の舌が口内へ入ってくるっっ………ナメクジが口の中を動き回ってるぅ!!!!
くちゅくちゅと水音が脳内に響くと同時に、頭の中はナメクジでいっぱいになる。
口の中の甘い感覚と、脳内のナメクジの映像がマッチせず気持ちが悪くなる。
「ん……っ…やめっ…!」
副会長が角度を変え、再び口の中に舌を入れて来ようとするその一瞬の隙に、俺は思い切り副会長を押し返した。
「ふ……もっとしっかりと、嫌がってくれたら楽しめたのですが、今日はこれくらいにしておきましょう」
「はァ"?」
俺は満足そうに踵を返す副会長をみて、殺意に近い怒りを覚えた。冗談でも不快すぎる仕打ちに、頭に血が上っていく。
そんな俺に対して副会長は、何処と無く嬉しそうな微笑を浮かべていた。
てか……俺のファーストキスを返せ……殴るぞ?
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