第八話

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婆ちゃんは、先代がいいようにしてくれたもんだから、息子もやってくれるだろうと思ったら、手数料だ、なんだかんだって、金を請求してきたんだそうだ。 そしたら婆ちゃんおこるよな。 「当たり前だ、金なんかびた一文払うかって、今までの取引、全部チャラにするみたいなこと言ったんだよ」 へー。 「へーじゃねえよ、あの辺ほとんどが婆ちゃんのもんだぞ、それなのに、あいつ、自分の物みたいなこと言いやがって」 ほとんどが婆ちゃんのもの? 「それでそうしたんだ?」 西ヤンの側にある不動産屋に頼みに行ったんだそうだ。 あったっけ? 古いけどな、あるという。 で、婆ちゃんはごそごそ一人でやっていたようなんだけど、今こんな状態になっただろ?俺心配でさ。 「じゃあ何?六ちゃんは、その不動産屋が何かしようとしてると思ってるの?」 「うん、だって古田の名前が出たじゃん、あいつ、事務所くるとついでにあそこに寄ってるんだ、何回か見たから間違いないと思うんだ」 まじかよ? 六ちゃんに、これは内緒にできないよと言いながら帰ってきた、彼は分かったと言ってくれたけど…。 カラカラと玄関を開けた。 そこには仁王立ちで腕を組んで立っている、娘と四つん這いの息子。 「こんな時間、どうしたんだ?おしっこか?」 してきたという姉。 「じゃあ寝ろ」 と俺は洗面所に行き手を洗い、うがいをして顔を洗った。 「パパ、こんな時によく飲んでこれたね」 ずぎゅん、胸痛い。 「お仕事だから」 「おお婆ちゃんになんかあったらどうするんだ」 そう言ったのだ。もう今は何でも喋りたがってうるさくてしょうがない。 今は大丈夫だろ?さあねるぞ。 「年より何だから考えろ」 「はい、はい考えます」 どこで覚えてくるんだよ? どかどか二人が歩いていく先は 「お帰り、遅かったね」 そこに居たのは尚。 「尚、ママは?」 病院、おばちゃん用事があるからって、急きょ交代。 ああそれで機嫌が悪いのか。 「母ちゃんは?」 奥で寝てるという。 「ありがとな」 「俺はいいんだけどさ」 二人は、尚の椅子の後ろで寝息をかき始めた。 俺待ってたの? まあな。 悪い。祐は? そういや叔父さんの所に行ってまだ帰って来てないな? 事務所には明かりはなかった、二階かな? すると玄関が開く音がした。 「只今、帰ってたんだ」 今帰ってきた。 祐は向こうと指さした。台所だ、話は向こうがいい。 叔父さんの話は、俺がにらんだ通りの話だ。 「弁護士はもう俺たちから離れているし、何かを頼んでいるというのはなかったんだ」 そうか、それで? 「うん、叔父さんも煮え切らないみたいなんだけど、土地の事みたい」 やっぱりな。 「聞いたか?」 祐は、豪が借りたときに一緒に行ってきたからそれだけはわかるけど、従業員の住むところはよくわからないと言っていた。 明日、調べるって。 そうか。 横浜の方は、大介君たちが行ってくれるそうだ。 「叔父さんもできるだけここにいたいからって」 「そうだな?」 でも、祐のその言葉が妙に引っかかったんだ。 横浜? さいたま? んー。神奈川?なんでだ? 俺も明日だな。 子供たちの寝顔、二人を抱いて自分たちの部屋へと連れて行った。 爆睡の母ちゃん、感謝です。俺も眠った。
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