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第十話
奥から走ってくる音がした。
「パパ!」
菜々、その後ろから、孫を抱えどうした、首になったかと言って出てきたのは母ちゃん。
俺は今の流れを話した。その話をすると、事務の子はバンと机をたたき、立ち上がり、なにかを探し始めた。
「そうかい、つらいね?」
「あいつらは、人間じゃねえ、なんで関係もない千晶たちが、苦しめられなきゃいけねえんだ。こいつらは一生、爺が人殺しだって背負って生きていかなきゃいけねえのによー!」
俺は頭を抱えた。
「晃…」
パシンと頭を叩かれた。それを千晶の前で絶対に言うなと言われた。
わかってる。
電話が鳴った。
「はい、晃さん社長」
その電話を取った。
今から戻る、それと、事務の子に頼みごとがあるから、それを待っている間手伝ってほしいというのだ。
電話を替わると、その子は、今探してます、はい、金庫ですね、わかりましたと言っている。俺は社長たちが来るまでの間、会社に係る書類から、婆ちゃんにかかわる物を抜取ったのだった。
夜、婆ちゃんの家に集まった人たち。
「すごい、何の集会ですか?」
「そうだね、おお婆ちゃんを助ける会って言ったところかね、みんなは向こうに行こう、こっちは大人の集まりだからね」
商店街から婦人会、老人会、多くの人たちはこの近所の人だけじゃない。
俺たちは頭を下げ感謝した。
「まず今起きていることからお話します」
みんなは黙ってそれを聞いてくれた。
「くそったれが」
「でもなんでかな?土地が欲しい?何をするんだろう?」
「ああ、それなんだがな、これを見てほしい」
ホワイトボードにはられたのはこの辺の航空写真だ。
「実は、この外環自動車道、ここから直接、高速への登り口を作る計画があるのをつかんだ」
は?
なんでだ?
インターまでは距離があるだろう?
「距離はある、だからこそ、ここから最短で行ける高架橋を作るそうだ」
聞いてねえぞ?
どこがそんな話を!
「まだ秘密の段階です、でも」
「まさか、ばあちゃんが死んだら」
「許せねー!」
そうだ、そうだ!
「今はまだ、内緒の段階です、ですが、彼らは動き始めています」
「まさかそれが、祐の」
「俺は嫌ですから、絶対しません」
まだ高校生だから釣れると思ったのかもしれませんけどさせませんからと社長は力強く言った。
そこで、まずは、婆ちゃんの土地について、今調べてわかったことは、とにかく、婆ちゃんの土地に難癖をつけ、自分のものにしようとしているものたちをぎゃふんと言わせるために動きたい、それはみんなの力を借りないといけない、どうか、力を貸してほしい話をした。
それと、土地の話になったら、みんなで共有してほしい事も頼んだ。
そして、俺たちは、動き出した。
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