第十一話

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第十一話

数日後。 社内の電話が鳴りやまない。俺に取ってくれという後輩。 電話のランプは真っ赤か、何だこりゃ? 「はい、日日、は?はい、ちょっと待ってください、はい、どうぞ」 それは、俺が乗せた、小さな小さな記事についてだった。 「はい、ありがとうございます、取材ですか?行かせていただけるよう考慮します、はい、ありがとうございました」 リークかよ、有難いねー。 「アキラ!」 指差す会議室。 俺は、鞄を持って、中へ入るとその後をついてくる、久保キャップたち数名。 「昔を思い出すわ」 「土地転がしだろ?あの時の最高額いくらだ?」 なんて当時を知っている人もいる訳だしな。 みんなが席に着いた。 「さて、ここまで大きくなるとやりがいが出る、三号先だが、下がりはこれで行く」 電車なんかの中刷り広告の文字だけが書かれた物を見た。 「ここまで反響が大きいとは思わなかったな」 「コロナで、家の掃除をする人が多かったんでしょうね」 「晃のあげまんもまだまだ健在ってか?」 「やめてくださいよ、こっちは死活問題ですからね」 入院騒ぎに、議員騒ぎ、土地まで絡んで、社長も大変だな、厄落としデモして来いよ。 俺厄年じゃないです。 「だがこれがすべて、古田に結びついているのが解せないな、晃をだけじゃない、俺たちも足を引っ張られないようにしないとな」 そこで話されたのは、今電話でかかってきているのは土地の事だ、死んだ人の遺産相続は大丈夫ですか?なんて見出しで始まった記事を見てくれた人が多くいたという事だ。 この話はよくある話だが、ただ俺は今回切り口を新たに、もっと細かく、例を挙げ、こうなるとこうなるといったように、不動産屋さん、弁護士、土地を持っている人との関わりを記した。 持っている土地を知らないで、他の人が我が物顔で使っていたり。死んだ人が持っていた土地が土砂崩れ等で、逆にもっと税金を払う羽目になったりと、知らぬ、存ぜぬでは済まないパターンがある。と紹介した。 とくに消えた住所に関しては反響が大きく、別枠で、特集が組まれる。 「なあ、お前んとこのチビたちのもとの家、まだ売れてねえんだろ?どうしてるんだ?」 忘れてた、まだそのまま、ばあちゃんがまだいいって言ってそのままだ。 そっちも見た方がいいんじゃないか?まだ隠してあるのがあるかも? まさかーという人たちだが、あってもおかしくないかもな。 キャップを見ると、顎で行けとサイン。終ったら動きます。 千晶に連絡、ばあちゃんのオッケーをもらい、祐に連絡すると行くと言うので俺たちは、祐のもとの家に向かった。 黄色いテープがまだからみついている。ほこりまみれの門扉を開けた。 買い手がつかないよな、見上げた大きな家は、まだそのままになっている。 差し押さえとかになったわけではないから、名義だけ千晶に変えた。こんな一等地、売りに出せばすぐにでも売れると婆ちゃんは言っていたけど、この時はまだ手を付けていなくてよかったと、これから起きることなんて考えてもいなかった。 一応、俺の方も一人、ついて来た。そしてある人にも頼んだ。 「お久しぶりです」 「すみませんお忙しいのに無理を言って」 いや、いやというのは、前に世話になった警官麻木さん。 あの時部長は殺されそうになったからな、彼らがいてよかったよ。 黙秘を続けている岸の偽物、高坂について聞いてみた。 え? ン?どうかしたか? 相模湖って神奈川ですよね? そうだけど? まさかな? もう中の調査は終わっているので入っても差し支えないと事件からすぐに祐たちを引き取り、ここには、何度か警察が入り、物をすべて処分して、祐たちの物は持って行ったから家の中は空のはずだ。 千晶と祐はもう何もないはずだよと言っているが、考えられる場所は、下と上。 天井を見て、俺たちは床下も見ていた。 「晃さん千晶さんちょっと」 新人の声に外へ出た。
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