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夜になってベッドに横になったが、眠れなかった。冷房をつけてあるのにひどく暑い。枕元に置いた宝くじがなくなっていないか、気になって仕方ない。
そうこうするうち、今度は妙にひんやりしたなと思ったらいつもの幽霊が現れた。
「…ドロドロドロ…」
自分でドロドロ言いながら出てくる幽霊も珍しい。
「恨めしや〜」
もう幽霊を見るのもあとわずかだと思うと寂しくなるくらいだ。
「聞いたぞよ〜」
「何をだ?」
「宝くじ当たったようだな〜」
おいおい、誰に聞いたのだ、そんなことを。
「しかも3000万も〜」
金額まで知っているとは恐ろしい。
「少し私にも分けてくれんかのう〜」
これはまたびっくりだ。幽霊が金を欲しがるなど聞いたこともない。
「この衣装も長年着込んでボロボロじゃ〜。髪の毛も伸びすぎたので前髪を切りたいくらいじゃ〜」
いやいや、幽霊が買ったばかりの綺麗な服着ていてどうする。幽霊は着物も髪もぼろぼろなのがいいのではないか。
「少しでいいから分けてくれんかのう〜」
幽霊は胸の前に出していた両手を返し、手のひらを表にしてせがむポーズをした。
とりあえず俺は幽霊を落ち着かせようと思った。
「あのな、残念だけどまだ当選が決まっただけで、金が振り込まれるまで1週間はかかるんだよ。だからそのころにまた出直してくれたら少し分けてやってもいい。おまえにも世話になったからな」
「きっとだぞ〜」
「ああ、約束するよ」
「頼んだぞよ〜」
そう言い残して幽霊は消えていった。
もちろん俺は幽霊に金など渡す気はない。
3000万円振り込まれたらとっとと引っ越してやるのだ。
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