宝くじと幽霊

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 俺の手は震えが止まらない。  友人に無理やり買わされた夏の宝くじが当たってしまったのだ。  しかも1000円やそこらではない。  3000万円なのだ。  友人に買わされたのはサマージャンボのミニだったが、その一等3000万円が当たっていた。  何度も何度も確かめたが間違いはなかった。  宝くじでこんな高額な当選をするなんてほんとに信じられなかった。  そしてこの当選を知って俺が最初に思ったのは、やっとこのアパートを出られるということだった。  今住んでいるこのアパートはけっしてぼろアパートではない。そこそこ綺麗なアパートだ。  ただひとつ大きな難点があった。  それはたまに幽霊が出ることだった。  そう、真夜中に若い女の幽霊が現れるのだ。俺のまったく知らない女だった。  もちろん俺も付き合っていた女性と別れたりしたことはある。しかし化けて出られるようなことをした記憶はない。  3000万も当たったのだから、まずはこのアパートからすぐに引っ越して幽霊ともおさらばしたかったのだ。  明日はさっそくみずほ銀行に行ってこよう、そして新しいアパートを探そう、そう思った。
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