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「あっ!」
ボーッと考え事をしてたらテーブルにある水の入ったグラスを手に引っ掛けて倒してしまった。
浅宮はさっと立ち上がり、手近にあったおしぼりだのナプキンだのでテーブルをさっと拭き、水がかかった俺の服を持っていたハンカチで拭いてくれる。
「大丈夫か? 俺のと上着、交換する?」
浅宮はそんなことを言ってジャケットを脱いで俺に寄越そうとする。
「えっ、いいっていいって。水だしすぐ乾くし」
そんなの浅宮に悪すぎるだろ。こんなビショ濡れのカーディガンなんて着させられない。
それからゲーセンに行き、クレーンゲームの商品を眺めていると、キャラクターぬいぐるみが目についた。ボールチェーンが付いた、キーホルダーサイズの。
昔から俺が密かに好きなキャラクターだ。ゆるっとしたところが癒されるが、ちょっとマイナーなのかあんまりグッズを見かけることがない。
欲しいけど、俺はクレーンゲームにチャレンジして取れた試しがないから無理だ。
「三倉。これ、好きなの?」
足を止めた俺の視線の先に気がついて、浅宮が後ろから話しかけてきた。
「うん、まぁ……」
「俺、取れるかチャレンジしてみるわ」
浅宮は言いながらゲームの機械に百円を投入している。
一度試したあと「これ、イケるやつだ。多分取れる」と言って、再びチャレンジして、今度は見事にぬいぐるみをゲットした。
「すげぇ! 浅宮!」
「俺こういうの得意なんだわ。YouTubeで攻略動画ばっか観てたときがあってさ」
浅宮は面白いやつだな。特技はクレーンゲームなのかよ。
「はい、これ三倉にあげる」
浅宮がボールチェーン付きぬいぐるみを差し出してきた。
「えっ、いいよ、浅宮が取ったんだから」
「三倉にプレゼントしたいから取ったんだ」
「なんだよそれ……」
「もらって。初デートの記念に」
「だからデートの練習だろ?」
「あ、そうだったな。じゃあ初デート練習の記念に」
浅宮はぽんとぬいぐるみを俺の手のひらの上に置いた。
「あ、ありがとう……」
浅宮は不思議な奴だ。俺にプレゼントしても、なんの得にもならないのに。クレーンゲームでゲットすることが好きなのかな。
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