3.初めての恋

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 浅宮は俺が落ち着くまで黙ってずっとそばにいてくれた。  頃合いを見計らって「三倉って見てて飽きないよ」と声をかけてきた。 「泣いたり笑ったり、俺、そういうの好きだ」  浅宮はとことん優しいな。俺を励まそうとしてそんなこと言ってくれてさ。 「はは……自分の気持ちもコントロールできないなんて情けないだけだよ……」  俺は立ち上がる。夕日も沈んだところだし、あんな醜態を晒したあとじゃ浅宮と一緒いてもなんか恥ずかしい。 「帰る?」 「うん」 「もう大丈夫?」 「うん」 「わかった」  浅宮も俺に合わせて立ち上がった。  そして自転車のところまで戻ろうとしたとき、暗くなって足元が見えなくなっていたせいで、草むらで何かに足をとられる。 「うわっ!」  よろけた俺を浅宮がサッと手を伸ばして支えてくれる。 「ありがと浅宮」  お礼を言って浅宮から離れようとしたのに、浅宮がそれを許さない。  え、なんで。  なんでこいつ俺の身体から手を離さないんだよ……。 「あ……さみ、や?」  どうしたんだと浅宮の顔を見る。  浅宮は、思い詰めたような顔で俺を掴んだまま。 「あっ!! 悪ぃ!」  浅宮は急にパッと俺から離れた。その様子はいつもの浅宮に戻っている。 「ったく三倉、ボヤボヤしてんなよ! 何やってんだ!」  浅宮は笑い飛ばす。 「ご、ごめんっ! 俺昔からどんくさいんだよな……」  俺も笑って誤魔化す。 「三倉、怪我はない?」 「うん。大丈夫」 「もしかして、俺のおかげ?」  浅宮はやったら嬉しそうに笑ってる。 「うぜー」  その通りだよ。ひとりだったらブザマに転んでいたことだろう。 「俺、三倉の役に立てた?」 「なんだよ急に。恩着せがましいな」 「俺がいてよかった?」 「まあね」  浅宮。お前がいないと寂しいに決まってるじゃないか。 「そっかそっか。俺も少しは報われるわ」  そうだなお前はいい奴だ。全力で報われるんだぞ、協力してやるから。  はぁ……。  好きだと気づいた途端に失恋した気分だ。  なんで浅宮なんて好きになっちゃったんだろう……。
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