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「あ、あの、三倉」
放課後、浅宮に声をかけられた。浅宮に話しかけられることなんて滅多にないからちょっとだけ驚いた。
「なに?」
「あのさ、お前に話があってさ。ちょっとだけ俺に付き合ってくれない?」
浅宮は髪をいじりながら恥ずかしそうに視線を逸らした。
なんだろう……? 浅宮が俺に話があるなんて……。
俺は浅宮に呼ばれて誰もいない教室でふたりきりになる。
「み、三倉って有栖と仲、いいよな……?」
浅宮はなんだか様子がおかしい。ちょっと緊張してるのかな。
「有栖? えっと、俺たち小学校からずっと一緒なんだ」
なんで浅宮は有栖の話を……。
「そ、そっか。どうりでいつもふたり一緒にいると思ったよ。あ、有栖ってやっぱり昔からあんなふうに優秀だったのか……?」
浅宮は俺を呼び出したのに、さっきから有栖のことばかり訊いてくる。
——わかった。こいつ、俺から有栖の情報を聞き出そうとしてるんだ。恥ずかしくて有栖本人には直接聞くことができないから。
俺がこんな目に遭うのはこれが初めてじゃない。昔からそうだ。
バレンタインに呼び出されたと思ったら「このチョコ有栖くんに渡してくださいっ」とか、俺をダシにして実は有栖を遊びに誘いたいだけだったとか、そんなのばっかりだ。
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