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土曜日の午後、来てしまった。浅宮の家に。
家族は夕方まで帰ってこないらしい。弟はサッカーの練習でそれに父親が付き添い。母親はパートに行っているそうだ。
「浅宮って、多趣味だな!」
浅宮の部屋には色んなものが置いてある。テニスラケットに、野球のバット&グローブ、ギター&アンプ、本棚にはパスタ料理のレシピ本。
「うん。小学校の時は野球、中学がテニス部。とりあえずやってみたいと思ったものはやってる」
浅宮はアンプに繋がずにジャーンとギターをかき鳴らす。そこから短くサビ部分だけ流行りの曲を弾いてみせた。
「すごいな」
浅宮はなんでも器用にこなせるタイプなのかな。特にこれといった特技も趣味もない俺とは大違いだ。
そこから適当にゲームやったり、マンガ読んだり、しゃべったり。
「三倉、高いとこ苦手なの?!」
浅宮が今度スカイツリーに遊びに行こうと言うから正直に苦手なことを話したら、浅宮に笑われた。
「それでも行こうよ。ちゃんと囲まれてるし、落っこちないしさ」
「ひっ……」
高いところに行くと考えただけで怖くなる。
でも浅宮とだったら行ってもいいかな、なんて考える自分もいる。以前有栖に誘われた時は頑として断ったのに。
あ。そうだ。思い出してしまった。
「有栖は高いところ好きだよ。有栖を誘えばいいんじゃないかな」
有栖は俺に断られてガッカリしていた。その後も行きたがっていたから浅宮が誘えば喜ぶかもしれない。
せっかくの有力情報を教えてやったのに、浅宮は途端に下を向いてしまった。有栖を誘う話をしたから緊張したのかな。
「俺は三倉と行きたいんだけど……」
そっか。友達と出かけるほうが気が楽だもんな。意中の相手と出かけるなんて意識しまくって楽しむどころじゃないだろう。
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