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「そうだ! 浅宮頼みがあるんだっ!」
俺はちょっと暗くなった雰囲気を明るくするために話題を変えた。
「えっ! 俺に?!」
「そう。卒アル見せてよ!」
人の部屋にきたら見てみたいもの。それは卒業アルバムだ。
俺が本棚に目をやると、一番下の隅っこにあったあった。小中学校の卒アル二冊とも並んでいる。
「それはナシだ。やめろっ!」
「見せろって! どうせイケメンなんだろ?」
隠そうとする浅宮を押しのけて俺はサッと本棚から卒アルを引っ張り出した。
「おい、こら勝手に……!」
卒アルを取り返そうとする浅宮。俺は卒アルを腹に抱えて逃げる。
「少しだけ!」
「恥ずかしいから嫌だ!」
浅宮とふたりで引っ張り合い。そのうち揉み合いになって、卒アルごと浅宮にぶん回された俺は床に倒れた。
倒れたのは俺だけじゃない。浅宮もバランスを崩して俺に倒れかかってきた。
え——。
仰向けに倒れた俺の上に浅宮が重なって——。
距離が近いなんてもんじゃない。浅宮に押し倒されたみたいな格好になってる!
浅宮と目が合う。これもかなりの至近距離。
すっごくドキドキする。これも近すぎるから浅宮に伝わっちゃうんじゃないか。
「ごっ、ごめんっ!」
浅宮が慌てて身体を離した。俺も「いいよいいよっ!」と言って離れたものの、お互い目も合わせられずになんとも言えない空気感——。
ヤバい! 浅宮に悟られたかな。
有栖の情報を教えるだけの存在のくせに、浅宮のデートの練習に付き合ってただけのくせに、まさか浅宮に本気になっただなんて恥ずかしすぎる。こんな気持ちがバレたら「え? 練習って言っただろ」と笑われるだけなのに。
やっぱ無理だったんだ。ただの友達の恋の応援なら喜んでできるけど、好きな人の恋を応援するなんて辛すぎる。そんなことをやろうなんて俺はドMだよ……。
浅宮から離れよう。「お前のことを好きになっちゃったから一緒にいられない」とは言えないから、友達じゃいられない適当な理由を考えなくちゃ。
浅宮とふたりで過ごすのも今日で最後かと思うとなんだか寂しくなってきた。可哀想な俺の恋心。好きと気づいた途端に終わりが決まってるなんて。
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