4.初めてのキス

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 そうだ。  俺はずるいことを思いついた。何言ってんだよと一蹴されると思うけどそれでも試してみたい。最後の悪あがきだ。 「ねぇ浅宮」 「ん?」  浅宮がこっちを向いた。 「浅宮ってキスしたことある……?」 「えっ!!」  浅宮の身体がビクッと反応し「ないよっ、ないないっ! 相手もいないのにそういうことできないだろ……っ!」と、ものすごく慌てている。  やっぱり。浅宮は今まで誰とも付き合ったことがないと言っていた。それなら——。 「そっ、それならさっ。れ、練習したほうがいいんじゃないかな……」  言ってて恥ずかしくなってきて話じりが小声になっていく。 「そんなのいつ誰と……」  浅宮は途中でハッと何かに気づいたようだ。俺の言わんとしていることが伝わったのかもしれない。  デートの練習も手を繋ぐ練習もした。だったらキスだって練習してくれてもいいんじゃないか。  浅宮、頼むから騙されてくれ! 俺のために、最後にいい思い出くれないかな……。 「おっ、俺もしたことないからさ。今後のためにどんな感じか知っておきたいしさっ」  思いついた適当な理由を浅宮にぶつけてみる。 「あっ、浅宮だって、いきなり本番でかっこ悪いところ見せたくないだろ?」  俺は説得にかかるが、浅宮は困った顔をしてる。  だよな。  さすがにそれはないよな……。  どうせダメだとわかってたし。  浅宮は俺のこと、バカな奴って思ってるんだろうな……。 「三倉はそれでいいの?」  浅宮は真面目な顔で俺を見た。もしかしてこいつ、俺の提案を受け入れてくれるのか……? 「う、うんっ!」  俺はコクコクと頷く。練習だってなんだっていい。浅宮とそういうこと、してみたい。 「じゃあ、してみる……?」  浅宮が俺に迫ってきた。さっきの卒アル事件でお互い離れていたのに、四つん這いの姿勢で近づいてきて、床に座っている俺の顔をじっと見つめてくる。  自分から言い出したくせに、いざそんなことをすると思うと緊張してきた。浅宮の切なそうな瞳のキラキラも、見ているとぎゅっと胸が締め付けられる。  なんだか浅宮に悪いな……。練習にかこつけて最後の思い出に、俺は浅宮とキスがしたいだけ。そんなあざとい俺の気持ちなんて知らずに浅宮は——。 「三倉。俺にどこまで許してくれる……?」  えっ、どこまでって?! 「唇同士はナシ? 俺、お前のどこにキスしていいの?」 「なっ……!」  ちょっと待て。俺が唇でもいいとか言ったら浅宮はまさか……。 「させてよ。キスの練習。俺、三倉としてみたい」  浅宮は気がついたら俺のすぐ隣にいる。それも身体が触れ合うんじゃないかというくらいの距離。 「あっ、浅宮こそ、いいの……?」  浅宮だってファーストキスみたいだし、さすがにそれは好きな人としたいんじゃないか……? 「うん。もちろん。そういうことしたら、少しくらい俺のこと意識してくれるかもしれないし……」  はっ?! どういう意味だ……? 「三倉。ここにキスしていい……?」  浅宮が人差し指でそっと俺の唇に触れた。  本当にいいのか?! 俺は嬉しいけど、浅宮は?!
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