1.熱い視線

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「わかった。じゃあここで少しだけサボってけよ」  そう言ってやると浅宮がぱっと顔を上げた。  俺はゆっくりと身体を起こす。それを咄嗟に浅宮が「大丈夫か、無理すんな」とサポートしてくれた。 「大丈夫だよ。そうだ、有栖の話でもしようか?」  俺の提案に浅宮はうんうんと力強く頷いて「なんでもいいから三倉と話がしたい」とキラキラ目を輝かせている。  こいつ。急に嬉しそうだな。  授業よりも有栖が大事なのか。 「中学の卒業式の時はすごかったんだ。その日一日で有栖が何人に告白されたと思う?」 「そんなにすごいのか……? わかんねぇ、五人くらい?」 「十一人だ。すごいよね。有栖に告白するのに待機してる人の数を見て、諦めた人もいたんじゃないかって俺は思ってる」 「すっげ……」  あ、やば。浅宮が軽くショックを受けてる。そんな話を聞いたらさすがの浅宮でも有栖と付き合えるかどうか不安になっちゃうよな。 「でっ、でも浅宮。お前も有栖と同じくらいモテるだろ? だから大丈夫だ!」  今更ながらに適当なフォローを入れてみたが、浅宮は「別にモテなくていい。ただひとりだけ、俺の好きな人だけ振り向いてくれればそれでいいのに……」とうつむいている。 「そっか……」  そうだよな。浅宮は有栖さえ好きになってくれたらって思ってるんだよな……。  有栖はちょっと中性的な美形だし、男の浅宮が好きになるのも頷ける。実際、中学校の頃も有栖は女子だけでなく、男からも告白されていた。  有栖は人気があるから、ビジュアル最強男の浅宮でも振られてしまうかもしれない。
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