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お通夜会場と化した家の中を見渡しても、おばあちゃんを始めご先祖様と思しき霊は誰もいない。
お盆って亡くなったご先祖様の霊が帰ってくるんじゃなかったっけ?
「可哀想だけど、幸いウチの法事は開源様がしてくださるし」
「うんうん、奏良ちゃんも安心して天国に行けるわよ。なんでも他所では『布施や戒名で高い金ふんだくるクセに何で化けて出てくるんだ。成仏してないじゃないか』ってクレームつけてくる遺族もいるっていうじゃない?」
「んまっ。化けて出てこられちゃマズいことでもあるのかしら。生きてる人間のがよっぽど怖いわー」
開源様って『どんなワケありの人でも成仏させます』で有名な人?
たしかに成仏させる為のアレコレなのに、実際成仏出来てませんでしたってなったら、そりゃあ詐欺よね〜。
その時、鈴の音と同時に障子が開いた。
ふわり。入ってきた人の袈裟が私に触れて嗤う。袈裟の中は永遠の漆黒だった。
「ご安心を。故人の悔恨や執着は何ひとつ残しません」
悔恨も執着も、持ちようがないほどに──
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