あの日の世界で君を見た──

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「ちょい待て、和彦!」 俺らを置いて先々行こうとする弟に俺は躊躇なく呼び止める。 「何だ!」 「荷物は俺が運ぼう。背中のやつを置いてけ」 「何言ってんだ!兄貴も荷物担いでんだろうが!ぼけるのも大概にしてくれ」 「そこは普通に前で担ぐさ!そんでお前は幸代を背負ってくれねえか?荷物よりは軽いだろ?」 「…正気か?」 弟が凄い心配そうな顔をする。 「幸代も和彦もちゃんと助かる可能性を考えたまでだ。安心しろ、俺が焼けても荷物は死守する!」 「いやお前も焼けたら全部散りだろうが…ってつっこんでる暇もねえ!」 時間がないと思ったのか、和彦は俺の言うことを聞いて荷物を足元に置いた。 そして幸代は拐われるかのように和彦により背負わされた。 「もたもたすんなよ?無駄に喋ってたせいで取り囲まれようとしてるぞ!」 「…!」 おっと。これは大変だ。 ちょっとした茶番劇を披露しただけで周りはもう火の海と化そうとしていた。 道も家も全部火が飲み込んでやがる。 「急ぐぞ!ついて来い!」 弟の指示に兄は従順に従ってやった。 荷物前後に担いでる分かなり重いが、ここで転んじまったら弟に怒鳴り散らされる! 兄の偉大さ、見せてやるぞ! 無我夢中で俺は前に行く和彦と幸代の背中を追っていった。 しかし俺は案の定道に転んじまった。 だがもう安心。気づけばそこは火の海の外側。 ふぅ危ない危ない。もう少しで本当に囲まれるとこだった。
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