あの日の世界で君を見た──

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◇ 「お目覚めですか、お嬢様」 例えるなら、コールドスリープのカプセルと言えば良いのかな。 蓋が開くと同時、私、白井(しらい)ユキはゆっくりと目を覚ます。 そこは、一面真っ白な部屋。 タイムワープ装置以外何もない場所。 否。私以外にも、白衣を羽織ったグラマラスな女性が一人いた。 「やあ坂村(さかむら)、一時間振りだね〜」 私は上半身だけ起こし、大きく欠伸をしながらその人に話しかける。 夢を見ていたかのように、私はあの空襲の時代から帰還してきたのだ。 いや実際に夢に近いものと言っても過言ではないか…半分。 「失礼ですがお嬢様、私は坂村ではございません。黒野(くろの)と申します。以後お見知り置きを」 「……」 別に、ボケたつもりはない。 過去へ飛んでると、たまに私担当の人物が変わる事が多々あるのだ。 それは私が未来を変えたという事。 あれは夢のようで、夢ではない。 今回は何が原因で変わってしまったのか分からないが、もう慣れた事だから何も気にしない。 「では改めて黒野。私は喉が渇いた。適当にフラペチーノでも持ってきてくれるか」 私のドライな対応に対し黒野は「かしこまりました、お嬢様」とあっさりと従順した。 お嬢様と呼ばれる私は、とある偉大な人物の令嬢…ではなく、隠し子なのである。 まあどちらかというと捨て子に近いのかな。 そして被験体でもある。 この黒野も執事のように見えて只の私の観察者。 所詮私の事は実験マウスとしか見えてないんだろうな。 タイムワープは私にとって遊具みたいになっているが…何も触れられないから、只々虚しいだけ。 ここに隔離されてる私の人生…本当つまらないものだ。
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