あの日の世界で君を見た──

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「弟君!次はどちらへ突撃致しましょう!東ですか、西ですか?」 和彦(かずひこ)の緊張感を少しでも和らげようと俺は横に立って能天気に敬礼しながら尋ねてみた。 「……」 兵隊の真似事しても和彦は無視しやがった。 否、今も俺を相手してる暇じゃないって事か。 弟の向く方向へ目をやると、遥か先にも火が回ってこようとしていた。 左右も遠くで燃え盛ってやがる。 「…まんまと罠にはまったって事かな」 次に和彦は苦虫を噛み締めたような顔で上空を見上げる。 黒い影が何体もこっち側に飛んできていた。 「まずいぞ…爆弾を落とされたら終いだ!」 左右の分かれ道を慌てて見渡す和彦。 背負わされた幸代はぶんぶんと頭を振り回され、また泣き始める。 大丈夫…まだ冷静でいられる距離だ。 それでも短期な弟は…、 「おい、落ち着け和彦」 「これが落ち着いてられっか!」 肩に手を置いた途端和彦は荒く俺の手を振り払った。 「どこ見ても、気付いた時にはでけえ炎が通せんぼしてんだぞ⁉︎」 一息付きながらも、未だ和彦は怒りを抑えられないでいた。 「このままじっとしてても爆弾が投下されるかもしれないんだぞ!」 もっと周り見ろよ糞兄貴!と和彦は俺を両手で思っきしぶっ飛ばした。
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