あの日の世界で君を見た──

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「周りが見えてねえのはお前だろうが!」 と……頬を殴ってやろうと思ったが、大泣きしている妹を担いでんのすっかり忘れていた。 間違って当たってもしたら大変だ。 「…っ」 和彦も、幸代の泣き声に気づいて徐々に冷静さを取り戻してきた。 「くそ…本当どうすりゃいいんだ」 地に膝をついて、情けない声を漏らしながら弟は妹を一旦下ろす事にした。 和彦に解放された幸代は、一目散に俺の元へ来て抱きついてきた。 妹の頭を撫でながら、俺はこの地獄から抜け出す方法を考えていた。 ふと……妹を見てからあるものを思い出した。 「なあ、和彦」 「あ?何だよ」 とても不機嫌そうだが俺は続けた。 「"白雪姫"って知ってるか?」 「あ?しらゆき?ひめゆり隊の別名か?」 「いや、妖怪の名だ」 それの存在を教える前からもやるせない気持ちであった弟が、また更に肩を落として今にも崩れ落ちそうな状態になる。 「あっ私それ知ってる!」 いつの間にか幸代は泣くのをやめて元気よく手を上げてきた。 「白い布を纏った綺麗なお姫様なんでしょう?」 「そうそれ。まあ姫というか、噂じゃ妖怪だとされてるんだがな」 「…で、それが何だよ」 凄い威圧のこもった声で弟が割り込んできた。 興味を持ってくれたのかな? 「白雪が行く先は何故か銃弾や爆弾が落ちないとされてるんだ。それはまるで千人針でも身に付けてるかのような不可思議な術でも持って…」 「だからそれが何だって話なんだよ!」 我慢の限界が来たのか地に向けて拳を叩きつける和彦。 「根も葉もない噂でこの場を切り抜けられるとでも思ってんのか!それともその架空の人物探し出して、ここを切り抜けようとか馬鹿な事ほざくんじゃねえだろうな⁉︎」
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