あの日の世界で君を見た──

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「角を曲がったぞ。しかも火が目の前にあるじゃねえか。何やってんだあの女。え?そっち曲がんの?それだと俺らが来た道の火の海に戻っちまうだろ、狂ってんのか」 不審人物の如く弟がこそこそ隠れて、白き女を観察していた。 将来が不安になる光景だった。 「おい嘘だろ!炎の中に突っ込んでったぞ?馬鹿なのか奴は」 「つまりは妖怪"白雪姫"で間違いないって事だろ?つっこみばっかしてたら体力消耗すっぞ」 しつこく振るわれようと、俺はまたしても和彦、幸代の肩に手を回す。 そしてそのまま全速力で炎目掛けて突っ走った。 海に飛び込んだ訳ではないが、念の為目を瞑って息も止めた。 炎は見かけだけで、四、五歩進んだだけで抜け出せた。 けど状況は対して変わらない。 というかこっちの方があちこち火が燃え上がってるからより身の危険を感じる。 空も気付けば煙で不気味な雲が出来ていた。 これだと上の状況が分からない。 いや、それを言うなら上空側の方だって俺らの事を認識出来てないのかも。 この道はある意味正解だったかもな。 「兄貴、悪い…目がやられた。煙のせいもあって前が見えづれえ」 こいつ、馬鹿真面目に目開けてやがったな。 「しっかりしろ。奴は目の前にいる。見失ったら本当に終いだぞ」 補助するように手を掴む俺。 しかし、実を言うと俺はもう体力の限界が近づいていた。 荷物が、あまりにも重過ぎた…。 「幸代…かず兄の援護を頼む」 「援護?」 「兄ちゃんの目の代わりになってくれって事だ」 幸いな事に、妹の目はほぼ無傷。 二人揃えば女を見失う事はないだろう。
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