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一瞬……全ての出来事が夢なんじゃないかと思うくらい、呑気で揚々とした場違いな声が俺を呼びかけた。
この地獄に、相応しくない弾んだ声を発した主に、俺は恐る恐る顔を上げた。
そこには、肌と変わらずの白く長い服を纏った女が狂気を孕んだ笑顔で俺を見下ろしていた。
ってか、こいつは和彦達が追っていたあの白雪じゃないか!
「お、弟達は!」
「…はい?」
俺は思わず奴に向けて叫んだ。
「お前の後ろにいた俺の弟妹だ!」
少し考え事をしてから、「あ〜」と女は手をぽんと叩いた。
「私をストーキングしてたロリ背負いのブサメン君の事かな〜?」
「……?」
何だろう…あまり聞き慣れない単語がほいほいと女の口から出てきだした。
意味は分からないが、多分相手側には通じているみたいだ。
「あの二人なら、燃えて崩れ落ちた家に押し潰されて──
死んだよ?」
「……っ⁉︎」
女の発言に、頭が真っ白になる。
何も聞こえない。というか聞きたくない。
嘘だ…嘘に決まっている。
「いや〜間一髪だったねありゃ〜。私が通った瞬間に二階建ての家が落ちてきたんだも〜ん。あともうちょい遅れてたら私も巻き込まれてたんだろうね〜♪」
「何で助けようとしなかった!」
俺は…奴を殴ろうと思った…が、それよりも和彦達のもとへ行くのが第一だと本能的にもそう判断し、俺は二人が向かった先へと走り……
「がは…っ」
しかし、身体が急に崩れ落ちた。
「い、息が…っ」
息が、苦しい!酸素が、思うように吸えない!
「おや、一酸化炭素中毒かな?よくもまあそんな重り抱えて逃げ回ってたもんだ。お荷物のせいで君は早死にしちゃいそうだ。見ていて草生えるよ♪」
身動きが急に出来なくなった俺に奴は見下すように嘲笑う。
くそったれ…俺が想像してた妖怪と全くの真逆の奴じゃないか…!
こんなの…
「人を喰らう……化物の気狂いじゃないか」
俺は八つ当たりのように地に向けて拳を打ち付ける。
「キチガイ…?今気狂いって言ったかい?」
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