あの日の世界で君を見た──

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ようやく、笑う以外にも怪訝そうな表情を作り出した女。 「この時代の君らには絶対に言われたくない言葉だねぇ。それに私は化物なんかじゃないし。日本人だし。眼科行ってこいよこのボンビー野郎!まあ金があればの話だけど笑」 息をするように悪口を吐き捨ててきやがる。 しかもこいつも俺と同じ人間で日本人だと? 笑わせんじゃねえよ…! 「じゃあ訂正してやる。この恥晒しの非国民がっ」 「へっ、私的に非国民と言って貰える方が有難いよ。私も君らと同じ部類だとは思われたくないからねぇ」 何を言っても、俺の言葉は奴の心に響かない。 「どうしてそこまでして俺らを愚弄する!同じ日本人なら、助け合うのが当然だろう!お前のその生き様は、間違っている!」 「……」 女は、とうとう口を閉ざした。 言い返せる言葉が見つからなかったのか? それでも、女はごみを見るような目で俺を見下したままで、言い足りない雰囲気が身体の奥の底からみるみる感じた。 「間違っている…か。面白い事を言う」 間違っているのは、この世界の方だろ!── 両手いっぱいに上げて、女は嘲笑しながら訴える。 「こんなに攻められてもなお日本は戦争を止めず、未来ある若者に戦場駆り立てては人間ミサイル、人間魚雷だとかアブノーマルな事をさせちゃうんだからほんとどうかしてるよ。サイコパスとしか言いようがないってね」 またあまり聞き慣れない単語が入ってくるが、馬鹿にしている事は十分に伝わった。 「お国の為戦場に行った兵隊さんに無礼だぞ!そして日本は鬼畜米英に勝つ!その時が来るまで、だから戦争を止める訳にはいかないんだ…っ。学校で学ばなかったのかこの世間知らずの非国民…!」 やばい…喋り過ぎたせいか、声も上手く出なくなってきた。 咳を何度か繰り返す。 まあ良い、言いたい事は言ってやった。 それよりこんな奴と相手するよりも早く…二人のもとへ向かわないと…。
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