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クラリスは、シルヴァンにべったりと寄り添う女性を一瞥した。
何度か姿を見かけた黒髪碧眼の女性。顔にはあどけなさを残しながらも、体つきは豊満。体のラインを強調するような際どいドレスは、鮮やかなピンク色だ。
「やだ、こわぁい。あたしの可愛さに負けたからといって、睨まないでくださぁい」
クラリスの視線に気づき、大げさにミラベルは声を上げた。鼻にかかった、甘ったるい声だ。
言い終わるやいなや、ミラベルはさっとシルヴァンの後ろに隠れる。
(はしたない)
クラリスは辟易したが、表情には出さない。
(多くの人々が見ているなかで、しかも、婚約が正式に破棄されてもいないというのに)
一方で、シルヴァンは腕を伸ばして、ここから先は通さないと言ったような態度を取る。
「クラリス! ミラベルを傷つけようとするなら、いくら元婚約者とはいえ相応の対応を取らせてもらうぞ!」
分かってはいたが、人々の好奇の目は三人に注がれている。
クラリスは反論と溜め息を飲み込んだ。
クラリスが黙っていることを肯定と受け止めたのか、シルヴァンの語気が強くなる。
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