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「養子になるなら、ドゥラノワ家という選択肢もあったのでは?」
子どもの頃から出入りしていた伯爵家だって、養子縁組を提案していたに違いない。
クラリスが思ったことをそのまま口にすると、アンリは眉根を寄せた。
「ドゥラノワ家へ入ったら、クラリスさまへ結婚を申し込めないからです」
「……? 何を言っているの? 思考が追いつかないんだけれど」
「王都を離れる際、私は伯爵とも約束をしていたんです。まさか王都へ戻ってきたその日に、クラリスさまが公爵令息から婚約破棄されるとは思っていませんでしたが……」
伯爵家を訪問した際に婚約破棄されたことを知らされ、急いで花束を用意しました、とアンリは続けた。
「クラリスお嬢さまは私がお迎えに上がりますと伝えると、伯爵は安心されたようでした」
「お父さまが……」
(やはり、公爵家での出来事はすぐに知らされていたのね)
申し訳なさで溜め息をつきたくなったが一旦飲み込み、クラリスはアンリへ問いかけた。
「それで、約束というのは?」
「もしクラリスさまが婚約破棄されてしまうようなことがあれば、私がすぐに婚約を申し入れるという約束です」
「……え?」
クラリスは瞬きを繰り返す。
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