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…。
“園内をジョギングしていた女性によりますと、現場から走り去っていく若い女性を目撃したとの事です…“
“警察は第一発見者である女性の証言と、園内の監視カメラのデータを基に、近くに住むN高校の学生Aが何らかの事情を知るとして、捜査を進めています。なお学生Aは事件当夜から消息が不明となっており…“
「ここじゃないかと、思った…」
潜伏先の体育館裏の倉庫に現れた寺田君は、安堵と切なさの入り混じった表情で話しかけた。
「来てくれると、信じてた」
あの夜、死体を前に呆然としていた私は、その様子を見ていた女性の悲鳴に動転し、その場から立ち去って街を彷徨った挙句、N高校の前に佇んでいた。
うっすらと埃が積もった倉庫に忍び込んだ私は、ただ漠然と時が過ぎることに身を任せていた。
そんな時、倉庫の扉が開いて寺田君はやって来てくれた。
こんな、私の為に。
行方知れずになった私にピンと来て、ここに駆けつけてくれたのだった。
昨夜の状況を足早に話す私。
寺田君は真摯な表情でジッと見つめ、優しく包み込むように親身になって聞いてくれた。
「俺のせいだ!俺が、夏の大三角の話をしたばっかりに、くそっ」
「違うよ。寺田君は関係ないよ!私がただ、寺田君の好きな歌詞に興味があっただけで。つい実物をこの目で確かめたくなったの…」
「くっ…。それがこんな事態に発展するとは。俺の一番大切な人を…こんな取り返しのつかない目に合わせてしまうなんて…」
「寺田君…今なんて?」
「いいんだ。もう何も言うな。俺が君のことを守るから」
「ううん。私、警察に行くよ。全て話せば済むことだから。初めからそうすれば良かったのにね。バカだよ本当に私って。ううっ」
「だめだ、行っちゃだめだ!俺を置いてかないでくれ…がばっ」
「うっ、痛い。…そんなに強く抱きしめたら、私壊れちゃうよ」
「はっ、ごめん。つい力が」
「あ、離さないで。もう少しこのままで、いさせて…くれますか?」
「もう離さない!絶対に…離さないよ!」
「うれしい。…私の全てをあなたに預けるわ。運命さえも」
「三条さん…。わかった、俺は覚悟を決めたぞ!一緒に逃げよう!」
「ああ、私も離さない!…むぎゅうっ」
「…明美」
「!?…あ、だめ…」
…。
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