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…。
愛しの寺田君からの、私の魂までをも包み込む、熱きも熱い夢のような抱擁。
私も負けじと、魂を込めて抱き返す。
彼の胸はとても広かった。私の全てを受け入れてくれる、途方もない愛情の現れであるかのように。
私の腕を回しても、自分の手が届かないほどの大きさだった。
まるで、すっくと立った巨大な大木を抱いているかのよう。
全身で触れ合って気づいたこと、彼の身体はとても頼り甲斐のある、びくともしない強靭な肉体の持ち主。肌はちょっとささくれ立ってカサカサした感触だった。
あれ、おかしいな?と思い、愛しの人を見ようと目を開く…。
って、どぅわぁ!
何してんの私…。
我に返ってみると、小山の近くにあった大木に必死になって絡みついているじゃあ、ありませんか。
素早く周囲を見回した。
ふう、良かった誰もいない。
こんな所を誰かに見られたら、通報されてしまうよ。
はっ!
今、間近の芝生で倒れている和装姿の”THE・力尽きた人”と目が合ったような。
夜の公園で、年若い娘が大木と、謎の淫靡な絡み合い。
ま、まずい。これは非常にまずい。
間違いなく通報されてしまうぞ。
と、とりあえず私は体裁を整て、”THE・力尽きた人”に、思い切ってひと声かけてみることにした。
私の思い違いかも知れないじゃないか…。
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