夏の大三角

6/15

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
…。 愛しの寺田君からの、私の魂までをも包み込む、熱きも熱い夢のような抱擁。 私も負けじと、魂を込めて抱き返す。 彼の胸はとても広かった。私の全てを受け入れてくれる、途方もない愛情の現れであるかのように。 私の腕を回しても、自分の手が届かないほどの大きさだった。 まるで、すっくと立った巨大な大木を抱いているかのよう。 全身で触れ合って気づいたこと、彼の身体はとても頼り甲斐のある、びくともしない強靭な肉体の持ち主。肌はちょっとささくれ立ってカサカサした感触だった。 あれ、おかしいな?と思い、愛しの人を見ようと目を開く…。 って、どぅわぁ! 何してんの私…。 我に返ってみると、小山の近くにあった大木に必死になって絡みついているじゃあ、ありませんか。 素早く周囲を見回した。 ふう、良かった誰もいない。 こんな所を誰かに見られたら、通報されてしまうよ。 はっ! 今、間近の芝生で倒れている和装姿の”THE・力尽きた人”と目が合ったような。 夜の公園で、年若い娘が大木と、謎の淫靡な絡み合い。 ま、まずい。これは非常にまずい。 間違いなく通報されてしまうぞ。 と、とりあえず私は体裁を整て、”THE・力尽きた人”に、思い切ってひと声かけてみることにした。 私の思い違いかも知れないじゃないか…。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加